複雑・ファジー小説

童話の国のアリス 第Ⅱ章 後 ( No.4 )
日時: 2012/04/29 21:30
名前: 竹中朱音 (ID: hsews.TL)

第Ⅱ章〜奇妙な花と笑う猫 後

どこからともなく小さく女性が話している。アリスは恥ずかしくなって青くなった顔は次に真っ赤になって心臓が今にも爆発しそうだ。

「ど…どなたかいらっしゃるのですか?」

アリスは恐る恐る絞り上げるように声を出した。

<はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜い!>

すると、何十人もの女性の声がして、アリスはきょろきょろ上を見ると、花がアリスを見るように前かがみになっていた。でもその花たちは真っ赤な唇の口があったのだ。これにはアリスもびっくりして「ヒィ!!」と叫び尻もちをついてしまった。

「あらあら、そんなに声を出したらこの庭主が来ちゃうわよ?」

そう言われてアリスは両手で小さな口を覆う。そして落ち着いて花達にダメもとでこう聞いてみる。

「あのぅ…どなたか私にぴったりのサイズの服を持ってませんか?」

「仕立て屋に行けばいくらでもあるわ?」

「今!ここに!」

アリスはついついまた大きな声を出してしまい蹲る。それを見たオレンジのガーベラがある提案をしたのだ。

「ねぇ!あの古い物置に絡みつくツタを使ってこの子にぴったりの服を編んであげましょうよ!」

<賛成!> <なぁに面白そう!> <いいわね〜>

そういうなり古い物置の一番近くに咲く赤いチューリップがツタを器用に取り始めて、花たちが楽しそうに編み始めたのだ。まるで人間の女の子と変わらない。時折薔薇がアリスのサイズを測りに来たりして、できたのが肩紐がちゃんとあるワンピースだった。ツタの葉で上手に編みこまれている。アリスはぺこりとお辞儀をしていそいそとそれを着た。

「わぁ!ぴったりねん!」

「にあってるわ〜」

花たちも嬉しそうに近くの花たちと話し出す。その時後ろから声がしたのだ。

「おまえ。なんで花なんかに話しかけてるんだよ?」

びくっと肩が動きひきつる顔で後ろを向くと、そこには紫の襟髪が長い髪をして、長い裾がぼろぼろのポンチョのようなコートを着た青年が立っていた。でもその青年には紫の耳とふさふさの大きなしっぽが生えていた。

「おまえ…だれだにゃぁ〜?」

おちゃらけた様子でニタァとギザギザした歯を見せて笑う。

アリスは恐る恐る小さな声でつぶやくように言った。

「あ…アリスです。」

すると青年はニタァとした口をますますニヤつかせ、とうとう耳の近くまで口を三日月のようにまげて目を満月のように見開くと、ぼろぼろな長いコートから長く鋭い爪をした手を素早く出してアリスの腕をつかんで風のように走り出した。

「ちょ…何なんですか?!」

「ああ!アリス!皆49人目の君が来るのを3年も待っていたんぜ!」

アリスは青年に引っ張られながら花畑を切るように走り出した。