複雑・ファジー小説

Re: *Alice in Crazyland*第Ⅲ章 ( No.5 )
日時: 2012/04/29 21:31
名前: 竹中朱音 (ID: hsews.TL)

第Ⅲ章〜狂笑 前

しばらくするとボロボロなウサギの形をした小さな家が見えてくると同時に、大きな笑い声が聞こえてきた。しかしどこか狂気じみて寒気がする…
そこにつくとアリスは走り疲れて顔が真っ赤なのに、猫耳青年は息一つ乱さずにやぁと口を吊り上げ言ったのだ。

「オレ、アリス見っけたにゃぁ〜」

人を小バカにしたおちょくる声で小汚いテーブルに座っている二人に言った。
シルクハットの男は飲もうとした紅茶の入ったティーカップをパリン!とコンクリートのタイルに落として、口を金魚のようにパクパクさせるもんだからアリスは少し困ってしまった。

「まさか…そんな…アリス!」

そういうと、テーブルにぶつかりながらも、長いテーブルを小走りでアリスのもとへかけて来て、長いシルクハットを取りひざまつく。そしてうやうやしくこう語るのだ。

「君が来るのを三年と25か月も待っていたんだ!さぁ!革命の始まりだぁはははははははははは!!」

「お前はいちいち大げさなんだよwwうヒwwアヒヤw」

そういうと灰色のウサギは、男が今さっきかぶったシルクハットめがけて飲み口がかけたティーカップをぶんと投げた。見事命中。シルクハットはぱこん!と音を出して地面に落ちた。
男はゆっくりシルクハットをまた頭にかぶせ、灰色のウサギを抹殺するかのような目でぎろりと睨む。灰色のウサギはそんなこと気づかずにまた狂ったように小刻みな笑いをしている自分に笑っている。


男はアリスを見ると、ニパっと灰色ウサギにした顔とは360°ちがう笑顔でアリスの服を指差した。

「おやおやぁ、アリス様!なんですかその緑の服は?アリス様はこちらのお洋服がお似合いですよ〜?」

そういうと男は右の指をパチンと鳴らし、シルクハットを左手で頭からとり胸元まで持ってくると、右手を突っ込むのだ。そうしてゆっくりと右手を出すと、中から水色と白がメインのエプロンドレスがあふれるように出てきたのだ。

「さぁ!これに着替えて!」

「どこで?」

「ここで!!」

目をダイアモンドのように輝かせて男は言うのだが、これは少し聞けない頼みごと。(男に悪気は無い)
アリスがおろおろしていると、猫耳の青年がにたりと笑って目をまんまるくすると、バサッと長く裾がぼろぼろのコートを真っ黒なカーテンのようにばさりと両腕で広げ始めたのだ。

「さぁ、アリスこれなら問題ないだろ?こちとらコートを脱いだらYシャツだけなもんだから寒いんだ。はやくしておくれにゃぁ〜」

「で…でも…」

「あいにくオレは10歳の体になんかキョーミなんてないんでね!」

ニヤニヤ笑ってアリスを小バカにする猫耳青年。それに対しアリスは少しむすっとふくれっ面になりながらも、猫耳青年のコートに隠れて着替えた。
水色の上腕あたりがふわっと丸くなっている長袖のワンピースドレスに真っ白なフリルのついたエプロンのひもを蝶結び、白と黒のボーダータイツを履き、水色の金のボタンが付いたオズの魔法使いを連想させる靴を履いて、つま先をコンコンコンと地面に鳴らした。

「猫さんいいよ。」

「オレはチェシャ猫だにゃぁ〜」

そういうと、コートをバサッとコウモリのように上にあげ、上手にそれをまた羽織ったのだ。

「アリス様、これを」

そういうと男はアリスにひざまついて、カチューシャをアリスの頭につけた。右眉の少し上についている水色の少し大きめなリボンがアリスの頭を華やかにした。

「アリス<様>なんてつけなくていいわ? あと、このツタの服。捨てないで?」

「…わかったよアリス! じゃぁこの服…?は案山子にでも着せておこう!」

男は家の近くの庭に刺さっている古い案山子に着せてニコニコしながらアリスに近寄る。

「さぁさぁ!アリス!この席に座って座って!話そうじゃないか」

男は小さな手を優しくつかんで、古く、ギシギシきしむ木の椅子に座らせた。チェシャ猫はアリスの隣に足を組んで座った。
テーブルの上には白いテーブルクロスがぐしゃぐやに敷いてあって、パンくずとか、茶渋が目立っていたり、底が抜けている、飲み口がかけている、といったティーカップが雑に置かれている。フォークが刺さったカップケーキだとか、メイプルの隣にあるバスケットの中にはクッキーだとかスコーン、マフィンが入っている。

アリスはスコーンを食べようと思って、メイプルの瓶を触ると、手にべたっと甘いメイプルの液が手についてしまったので、急いでテーブルクロスで手を拭いた。