複雑・ファジー小説

Re: 童話の国のアリス 第Ⅹ章 ( No.55 )
日時: 2012/04/29 22:07
名前: 竹中朱音 (ID: hsews.TL)

第Ⅹ章〜真っ赤なガーデン

「おい、なんか言えよ。」

チェシャ猫が八重歯をギッと少女へむき出しにしたが少女は口を堅く閉じている。



















そのうち少女は口元を緩め、ニコリと笑ってアリスを見ると、手をガーデニングテーブルへと向けた。
これは「座って」と言っているのだろうか。

少女が機嫌を直してくれたと思ったアリスは、急いで椅子へと腰を掛けた。
ティーカップの中には冷めきった紅茶と、薔薇の花びらが一枚入っていた。

少女はアリスの席の向かいへ来ると、次は手をカップへ向けた。まるで「飲んで」と言っているようにだ。
本当は冷め切った紅茶なんて飲みたくはないのだが、少女の期限のためだ!とアリスはカップへ口をつけて、ゆっくり飲み干したのだ。

すると少女はゆっくりと人差し指でアリスの首あたりを示し始めた。




「アリス!伏せなさい!!」




「?!ヒィっ!」

白ウサギの突然の大きな声でアリスは席から転げ落ちてしまった。
ガシャンとカップが砕ける音。

ゆっくりと顔を上げると…
少女の指先からはまるで茨のツルのようなものが、まっすぐ伸びていたのだ。
もし白ウサギがあの時大きな声を出していなかったら、あの茨はアリスの首を貫通していただろう。

「のが…し…た…?」

少女が小さく口をあけて、薄い声を出すと、車いすから入るように茨が少女を囲い、丸くて大きな瞳は、何も映さぬ黒から、血のように赤い目に一瞬で変色し始めた。


「うぐ…ぁうぐぅ…うぅ…ぅぁぁあああああああああああああああ!!!」



裂けそうになるまで口を大きく開けて、苦しそうな悲痛な声を上げると、少女の手足からは無数の茨が、目にもとまらぬスピードで生え、あの「話せる花」のように、顔は大きな薔薇に変わってしまい、不気味な多きい口がニヤリと笑った。
目も鼻もない「口の生えた花」はアリスを鳥肌にさせた。

「口の生えた花」は、はるかにアリスたちより大きくなり、こちらを見下ろしている。


「何…何なの…?!」

「コイツがローズディーテかにゃ?」

「おそらく。」

チェシャ猫はロングコートから、ライフル銃を取り、姿勢を低くした。



「アレをみなさい!」

白ウサギの指さすほうには、ハートの城で会った「アルス」と「黒うさぎ」が薔薇のアーチに腰をかけ、アリスたちを見下していた。


「あなたたちが少女をこんな姿に?!」

「ちがう。あれが少女の本当の姿なのだ。まぁ今からすることがアタシたちのする事だ。」


そういうとアルスは赤いスカートのポケットから、ガラスの小瓶を地にとり、蓋を開けると、中の紫の液体を「ローズディーテ」に向けて思いっきりかけたのだ。

ローズディーテはぎゃぁああああと叫びながら、液をぬぐうように体をよじらせたりしてみるが、そのうち首をガクリとさせる。
勢いよく顔をまたあげると、額には紫色したハート型のダイアが埋め込まれていたのだ。



「こいつは強化薬。白雪に毒りんごを渡した継母から頂いたものだ…クク…コイツをかけると、かけられた相手はより強い力を手に入れることができるのだ。」

「アルス天才!さぁ!あの女も白雪もぐちゃぐちゃにしちゃおう♪」

黒ウサギがどこか寒気を覚えるような笑みでアリスをじいっとみる。


「そんなこと…させないわ…!」


そんなアリスのココロに反応するかのように、リングの石が青白く光ると、リングのはめてある右手にはあの剣が握られていた。