複雑・ファジー小説
- Re: 童話の国のアリス 第13章 ( No.65 )
- 日時: 2012/04/29 22:06
- 名前: 竹中朱音 (ID: hsews.TL)
第13章〜暴食夫人 前
いつか来た赤レンガの2つの眼鏡橋。2回もあってか大きな白の門前の門番トランプ兵はチケットを見せるとすんなり通してくれた。
あいもかわらず 23、15、16 とメイド服に番号が付いた「元」アリスは、間違えて植えられた真っ白な薔薇を真っ赤なペンキでペタペタと塗りつぶしていく。
「いつまであの子たちは塗り続けているの?」
「さぁね。お前が赤になればすべて解るはずさ。」
そっけないチェシャ猫の答え。
アリスは真剣に聞いているのにと口をとんがらせた。
「元」アリスの瞳は真っ暗な部屋に閉じ込められているかのように深く黒い瞳。
そんな時、「元」アリスとアリスはパッチリ目があった。
「いや・・・いやぁ!」
小さく悲鳴を上げると「元」アリスは怯えているかのように後ろへ後ずさりすると、灰色のエプロンが真っ赤なペンキで台無しになってしまった。
「大丈夫ですか?!」
急いで駆け寄り手を差し伸べようとすると、チェシャ猫が行くなと腕を強く引っ張った。
「気の毒ですが、我々が手を差し伸べればここにいる皆が打ち首です。」
そう冷静に言うのは白うさぎ。
「まったく!女王は「落ちたアリス」に優しくするのはいけないんだって!酷過ぎるよ!」
ハッターが気に食わない様子で薔薇園にいる三人のアリスを見た。
誰にも手を差し伸べられず、一人でぐしょぐしょの服でまだペンキの缶の中に入っている赤ペンキでまた白薔薇を塗りつぶす。
チェシャ猫に腕を強く引かれて城の中へ入っていく。
アリスは城に入るなり感動して目をキラキラ輝かせた。
アリスより遥かに高い天井。そこには金のシャンデリアがまばゆい宝石を輝かせてぶら下がっている。
長い黒のテーブルクロスのかかったテーブルにはたくさんのごちそうやアイスにジュース。
老若男女招待客はみな銀の仮面をつけて鮮やかなドレスを着飾っている。
「すごいわ!今日は仮面パーティーなの?」
「皆女王に心を悟られぬようにつけているのです。気に食わなければ打ち首です。」
白ウサギが物知りそうに教えてくれた。
「よく知っているな白うさぎ。」
後ろから幼い少女の声。振り向くとそこにはハートの女王とハートのジャックがいつの間にか立っていた。
「なんの用だ。」
チェシャ猫はいかにもと八重歯を見せて威嚇をする。
すると女王は機嫌が良いのかそんな態度を前にしてもニコリと不気味なほど笑って身振り手振りをしながらこういったのだ。
「アリスなら来てくれると思ったぞ!さぁ、今宵は楽しもうではないか!」
「はい…。」
前にあったときの第一印象「傲慢」とはかけ離れた態度にアリスは逆に困ったが、女王はテーブルに置いてある長細いグラスに注がれたピンクのシャンメリーを手に取ると、次の招待客に声をかけ始めた。
どうやら挨拶をしに来ただけなのだろうか。
ハートのジャックはアリス達に一礼すると、すぐに女王のもとへついていった。
「いかにも怪しいね!アリス油断しちゃダメだよ!」
「うん…わかったわ!」
今日の女王は純粋にアリスたちをパーティーに招待しただけのように見えたが、とりあえずハッターの言うとおり注意も必要だ。だってアリス達は女王からすれば「敵」なのだから。
「アリス〜どっか食べ物でも探しに行こうにゃ〜」
ぐったりと耳が垂れて元気がないチェシャ猫。
確かにアリスもお腹が減ってきた。
「行こう!」
「私は減っていないのでそこらを見てきます」
「僕も白ウサギと一緒にそこら辺を見てるよ!」
アリスとチェシャ猫は食べ物の置いてある長いテーブルに向かうことにした。
「何を食べようかしら!」
「これでも食っとけ〜」
そういってチェシャ猫はアリスにクリームがたっぷり乗って、カラフルなチョコが降りかかったカップケーキを一つ手に乗せた。
チェシャ猫本人は、カウンターからフォークを一つ手に取ると、それで好き勝手にローストビーフやマリネ、ステーキにポテトサラダと好きなように刺しては食べて刺しては食べてを繰り返した。
「チェシャ…ちゃんとお皿に盛りつけて食べなきゃダメでしょ…」
「いーんだよ!俺たちゃ客にゃー♪」
満足げにアリスの注意なんてお構いなしにまた食べ始める。
アリス的にはチェシャ猫の下品な行動のせいでこっちにまでじろじろ見られるのがたまらなく不快だった。
そんなことを考えていると、いきなり何か大きくて柔らかいものにぶつかった。