複雑・ファジー小説

Re: 童話の国のアリス 第13章 ( No.66 )
日時: 2012/04/29 21:51
名前: 竹中朱音 (ID: hsews.TL)

第13章〜暴食夫人 後

アリスはびっくりして上を見ると、思わず目を真ん丸にした。
そこにはアリスの顔の5倍の大きさはあるであろう大きなシワシワな顔。口を「へ」の字にして真っ赤な口紅を付けている。
年は50歳ぐらいだろうか?
女性は眉間にシワを寄せてた。

「す…すすすすみません!!!」

今まで見たことの無い大きな女性。失礼と解っていてもどもってうまく言えない。

「あらんお嬢ちゃん。大丈夫ん?」

女性は以外にも優しくオレンジのドレスの袖から小さなシワが刻まれた手をアリスに差し伸べ立たせてくれた。

「お嬢ちゃん一人で来たのかしらん?」

「いえ…もう一人———…」

「アリスー、ここに居たのかにゃぁあああああ?!」

やってきたチェシャ猫。
女性を見るや否やいきなり毛を逆立ちさせて小さなアリスの後ろに隠れた。

「こここ侯爵夫人!なんでここに居るにゃ?!」

冷や汗をたらたら流してアリスの肩を痛いぐらいにギュッとつかむ。

「ワタクシも今日お呼ばれされたのは打ち首かと思ったら、こぉんなに素敵なパーティーに招待されて愛しのペットとあえて幸せだわん!」

すると侯爵夫人は大きな頭に小さな体と、見かけによらずすごいスピードで後ろのチェシャ猫の腕を引っ張る。


「あの…やめてあげてください!」

とっさに出た言葉。だけど侯爵夫人の腕は弱まるどころか強さを増している。

「猫ちゃんは私が赤ん坊ばっかりかまっていてヤキモチやいて家出しちゃったのよね?そうよね?!」

「んなワケねーだろ!お前が嫌いだかr——・・・

「大丈夫よ!赤ん坊は子豚になって私が今朝美味しく食べたから猫ちゃんはうんと可愛がってあげるわん!」

グイッと引っ張ると、チェシャ猫と肩をつかまれたアリスはバタンとその場に倒れこみ頭を強く打ってしまった。

















気がつくとそこにはチェシャ猫と侯爵夫人はいない。
いきなりの事でアリスはどうしていいか解らなかった。
一緒にいたのに、チェシャ猫は侯爵夫人に連れてかれてしまったのだ。

言いようのないパニックにおそわれ、とりあえずは白うさぎとハッターの所へ急ごうと、途中何人かの仮面の招待客に当たりながら道をかき分けた。











どうしよう!どこにも見当たらない!?
早くしないと!













ちょうど息が切れてきたとき、仮面の紳士淑女が華麗に舞い踊る舞踏を二人が見ていた。

「白うさぎしゃん…はったーしゃん…」

息が苦しくてうまく言えなかったが、ハッターはアリスの声にすぐ気づいてアリスの目線に合わせてしゃがみこんでくれた。

「どうしたんだい?そんなに息を切らせて?」

「チェシャが…侯爵夫人さんに連れてかれちゃったんです…」

「侯爵夫人ですって?!」

白ウサギは真っ青な顔をした。

「あの方は空腹のあまり、犬や猫、鳥に豚、、虫や人間までも食す【暴食夫人】とも呼ばれているほどの方です。チェシャ猫を連れ戻したということは…」

「い…いくらなんでも可愛い元飼い猫を食べたりは…いやでも…」

ハッターは頬杖をついてう〜んと考え込む。

アリスも考えてみた。
確かさっき赤ん坊とか子豚とか言っていたのが脳裏をよぎる。
まさかとは思うが…チェシャ猫も・・・?!



「どうしよう…チェシャ猫がステーキになっちゃう…!!」

「まぁ私自身はチェシャ猫を好いていないのでどうでもいいですがね。」

「君…アリスの前でなんてことを…!」

白ウサギは眉間にしわを寄せて面倒そうにアリスを見ると、一つため息をついた。


「はぁ。仕方がないですね。暴食夫人の空腹を満たすような料理を出してみては?それしか彼女にはないでしょ?」

「それは良い考えだ!そういえばこの前侯爵夫人の家にディナーをご馳走になったとき彼女の料理はぜぇんぶ胡椒がキツたっかね!きっと彼女は大の胡椒好きなんだよ!」




「私…料理…苦手なの・・・」



真っ赤になってうつむいてしまった。
そう、アリスは両親が外出している時お昼にハンバーグを作ろうとしたらこれが見事に大失敗!
それからもう料理が大嫌いなのだ。


「まったく…良いですか?女王の城と今回の料理の量となればこの城に必ず厨房があるはずです。そこのコックに作ってもらいなさい。」

「白うさぎさん…!」

アリスは目から落ちそうな涙をぬぐって白ウサギに言われた通りにまずは厨房を目指すことにした。