複雑・ファジー小説

Re: 童話の国のアリス 第15章 ( No.78 )
日時: 2012/05/02 12:06
名前: 竹中朱音 (ID: hsews.TL)

第15章〜女王の好物

「そういえば女王様には好きな食べ物とかあります?」

「む・・・いきなりなんだ?」

はっとした。確かにいきなり他人から好きな食べ物と聞かれても相手は困るだけだ。

「いえ…あー…そうそう!今度皆でお茶会とかしてみたいなと思いまして!」

「フム…」

女王は顎に手をあてる

「ベリーのタルトが好きだ!お茶会をするなら紅茶とスコーンも欠かせないな!」

「まぁ、それはステキですね」

青い芋虫が言った通り、簡単に好物を教えてくれるだなんて。これでビルの頼み事は完了した、アリスは嬉しくてつい口をニッとさせる。

これでチェシャ猫が———ー



「そうだアリス、あの猫はどうなった?」

「猫…チェシャ猫ですね!そうそう侯爵夫人に——…なぜそんなこと聞くのです?」

「う…ん?い、いやぁなんでもないぞ!!」

女王は手を大きく左右に振る。明らかに何か隠しているように見える、だって目が泳いでいるんだから。

「何か…隠してません?」

「ううう五月蠅いぞ!!打ち首になりたいか!」

「ヒッ!!」

女王は顔を真っ赤にすると、手洗いのそばにある液体せっけんの透明なボトルをアリスに向かって4〜5個投げた。
これにはアリスもたまげて頭をかかえながら走って手洗い場を出て行った。














「危なかったわー」

明らかに女王は何かをしているように見えた。
だが今はビルに女王の好物を教えなければならないのだ、ボトルが当たった腰をさすりながら厨房に向かって歩く。










厨房の前にはもう青い芋虫はいなかったが、厨房の中ではビルの声がする。
アリスは厨房の扉を開けた。




「やぁ君か!ちゃあんと聞いて来てくれたかい?」

「ええバッチリよ」

その言葉を聞いたビル、ニコリと笑ってアリスに駆け寄った。

「女王はベリーのタルトがお好きといってたわ」

「そう!それだ!ベリーは腐るほどあるしパイ生地の材料だってある!ああ!首は大丈夫そうだ!」

ビルはこれに大喜び。そこらじゅうをぴょんぴょんと飛び回り、たまに食器棚に体をぶつけて何枚か白いお皿が割れる音がした。











「ビルさん落ちついて!…ところで胡椒と豚の料理考えてくれたの?」

「ああ、もちろん!これなんてどうだい?」

そういいながら斬りかけのタマネギやニンジンなどが酷く散らかっている鉄のテーブルから取り出したのは、何枚か「ふせん」が貼ってあるボロボロのレシピ本。
その本をパラパラとめくってアリスの顔面に押し付けた。