複雑・ファジー小説

童話の国のアリス 第16章 ( No.92 )
日時: 2012/06/17 23:34
名前: 竹中朱音 (ID: hsews.TL)

第16章〜クッキング・タイム














「今度はちゃんとできたわ!簡単ね!」

「今、調子乗ったね?」

顔を真っ赤にするアリスをニヤニヤとビルは見ながら、アリスの切った野菜を熱く沸騰した鍋にボトリ、ボトリと落とした。
透明な沸騰するお湯の中で「鮮やかな色の野菜がくるくる回る。



「肉は危ないからボクが切ろう!」

「ええ、お願いするわ」

何処の部位かはわからないが、大きくて油がのった美味しそうな肉をビルは一枚切る。
黒いフライパンにどろっとした薄黄色の油をひいて、コンロをぐるりと回すと青い炎がぼうっと顔を出す。

そうして肉を熱されたフライパンの上に置くと、美味しそうな匂いが厨房を包んだ。




「いいかい?フライ返しを使って肉の様子を見るんだ、こんがり焼けたらボクに知らせるんだよ?ボクはタルトを作っているからね!」

「わかったわ!」


それからアリスは何回かフライ返しで肉をひっくり返して、またひっくり返す。

肉の焼ける香ばしい匂い…後ろを向けばビルの作るベリーの甘酸っぱい匂い。



———————はぁ…どちらも私の好きな匂い。






















「アリス!こらアリス!もう十分焼けているぞ?!」

「はっ!あ、えぁ!本当!」

急いで火を止めて肉をまな板に置く。
ビルは素早くその肉を縦に5等分にする。
ローズマリーのハーブ二枚を肉の上に置いて、アリスは小棚に置いてあった空のペッパーミルに黒こしょうを入れてガリガリと胡椒をまぶした。




「さぁ!タルトはできたぞ!ソテーもできたね!」

ビルは鉄のワゴンに大きなタルトを乗せて忙しそうに厨房を出ていく。

「あぁ!待って!」

アリスもとっさに手に持っていたペッパーミルをポケットにつっこんでお盆にポークソテーとナイフ、フォークを乗せて厨房を出て行った。