複雑・ファジー小説

Re:   殺戮 は  快楽 で ......参照100突破 ( No.19 )
日時: 2012/02/13 11:58
名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: 5bYoqzku)
参照: 本編を書かずして書く短編か……。

*本編は今日の夜。柚子は影人と影人守に命を狙われながら書きます。

参照100突破の記念の短編。
頂いたキャラクタ、まだ出ていないキャラクタをメインにした短編
グダグダですが悪しからず。

高木新羅視点の一人称



『煌く木暮と輝く夕日』

 ——夕日が綺麗だと思ったのは、木暮に感動を覚えたのは、あんたとあいつらに出会ってからだったんだ。

「しーくん!」

 俺の耳に、俺を呼ぶ可愛らしい女の子の声が聞こえる。その声は俺が聞きなれているパートナー。木月愛(きづき あい)の声だった。
 愛は小学生の影人。同じ影人の木月奏って人の妹だ。

「愛、どうしたんだい? まだ時間じゃないんだから、態々組織本部(アジト)に来なくてもいいんだよ?」
「しーくんが居るかなぁーって思ったの!」

 俺と愛が居るのは金戸市のとあるビルの一角にある影人や影人守が集まる組織本部。影人と影人守の幹部である三日月双子と長の伊野塚圭二って人が作ったらしい。
 俺はこの組織本部の独特の雰囲気が好きだった。部活終わりの学校帰りはほぼ必ずこの組織本部によるようになっていた。
 ただ、雰囲気を感じに来るって訳じゃない。此処に来るとたまに影人や影人守がたくさんいる。もちろん、愛も。

「あ。お前ら君のはえーな」
「あら……。私たちが一番乗りだと思ってたんですけどね」
「………」
「兄さんもなんか話せよう。眠いのか? まさかまだ夕方なのに眠いのか?」
「……うるさい」
「ほらほら、皆さん中に入って下さいな。まだ人は来るんですから」

 俺と愛が数十分ほど世間話をしていると、騒がしい人がいっぱい来た。
 上から、木月奏、影人。山中ヨミ、影人守で奏のパートナー。三日月上弦、影人。三日月下弦、影人守で上弦のパートナー。……伊野塚圭二、影人であり影人守でもある人。

「おっ、愛やっほ」
「そーくん、やっほ」

 平和ボケした顔で笑う奏が俺は少し苦手だ。
 前、ヨミに誘われて仕事現場に連れて行ってもらったけど、能力も使わないで人を殺めていく。それも爪を一枚一枚剥いでいったり、腕に深い傷を一本一本入れたり……。
 その時から俺はあいつのことが嫌いだ。
 ただ、あいつと愛が兄妹だってことが信じられない。

「さぁ、本題だよ。今日は紹介する人がいっぱい居てね」

 伊野塚さんが部屋の電気をつけながら話す。夕日が差し込んでいてオレンジ色だった部屋は、蛍光灯のせいで夕日の輝きを感じれなくなったんだ。

「入ってきて」

 そう伊野塚さんが言うと、扉が開いたんだ。ガチャって音を立てながら。
 入ってきたのは赤目の女の子、背の高い黒髪オールバックの男の人、……犬、奏と同じくらいの慎重の男。

「しーくん、わんちゃんだよ! 可愛いねっ」
「……あ、うん」

 入ってきた人の濃さに目が奪われていた。『犬』ってなに、『犬』って……。

「ま、自己紹介はしなくていいんだけど一言ずつどーぞー。
 てか、むしろ自己紹介してくれてもいいよ、てかしてよ」

 下弦さんうざい……。おっと、本心が。

「私はフルフル! 本名フルリナ・ミタージュという者!」
「学校と同じだな」
「そうね、驚いたわ」

 あいつとヨミさんは知り合いなのか。俺は自らフルフルと名乗った少女を見る。まるでアニメのキャラみたいだ。
 目の赤さが肌の白さを際立たせてる感じ。

「オレは荒瀬芥(あらせ かい)。オレにはオレの信じるものがある」
「カッコいいな」
「……筋肉、羨ましい」
「俺も筋肉ほしーな、いーないーな。俺も鍛えるかなぁ」

 何故だろうか。男が全員筋肉に憧れてる。
 俺は流石に筋肉はいらない、かな。欲しいのは……ない、か。

「おれ、なまえ、咎(とが)。犬、ちがう。ごーせいじゅ、キメ、ラ」

 すぐ、ほぼ全員ざわめいた。伊野塚さんはニコニコしてたけど。
 俺も驚く。キメラなんてこの世に居るわけが無いと思っていたんだ。

「本当に……キメラ、なのか?」

 俺の心の叫びが漏れる。多分、みんなが一番気になっていることだろう。
 その俺の言葉に、桐と名乗った合成獣キメラはコクリと頷いた。

「最後は僕ですか。僕は秋野弘文(あきの ひろぶみ)。しがないスパイです」
「あ、スパイといっても私たちの敵の、ね。勘違いしないように」

 後から補足する人が居なければ、秋野って人はアビリティで滅茶苦茶だっただろう。
 ふと俺は外に視線を向ける。俺の目に映ったのはオレンジが奥からやってくる闇に飲まれている景色だった。

「ペア構成を変更するから、よく聞いて。
 奏くんとヨミちゃんのペアにフルフルちゃんを、三日月幹部の二人のペアに弘文くんと芥くんね。
 愛ちゃんと新羅くんのペアには咎と私がはいるよ」
「けーくんが入るの?」
「ボス、それは本当ですか?」
「もちろん」
 
 満面の笑みで言う伊野塚さんに嬉しさと恐怖を覚える。
 今日の仕事は行きたくない、俺は切に思った。……そう思ってもまたいつもの夜が始まるんだ。

「それじゃぁ、行こうか」
「「はい!」」

 みんな、部屋から出て行く。部屋に残ったのは足を動かさない俺と俺を待つ愛。
 伊野塚さんと咎は先に外に出て行ったみたいだ。

「しーくん……?」
「愛、行こう」
「うんっ!」

 愛の笑顔の穢れの無さには毎度驚く。
 夜になると平気で人を殺す少女の純粋無垢なその笑顔。
 恐ろしくも可愛い笑顔なんだ。

 バタンと音を立てて扉を閉める。
 うるさかった室内が静寂に飲み込まれていった。
 闇という、静寂に——


 ——今日最後に見た夕焼けが木暮が夕日が綺麗だと思ったのは、あんたとあんた達に会ったからなのかもしれない。