複雑・ファジー小説
- Re: 殺戮 は 快楽 で ......更新 フルフル登場 ( No.29 )
- 日時: 2012/02/15 17:44
- 名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: 5bYoqzku)
- 参照: 失意の終焉——死をもって生を咎める
「あ、そうだそうだ。本日の連絡ごと3つ、ちゃんと聞けよ。
1つ目、今日の7時間授業は2時間目終了次第即下校。
2つ目、1時間目、2時間目ともに、影人と影人守についての勉強。昨日の夜に事件があっただろ? それで、初めてしっかりと学ぶべきだってことになったからだぞ。で、2時間目が終わったら帰るのは校長が出張でいないからっていうのと、夜が危険だから。
3つ目、洸太先生明日誕生日だから男女関係無くプレゼント持ってくること! 以上!」
縁川が3つ目を言い終わるとタイミングよくチャイムが鳴る。教室中で巻き起こるブーイングを背に縁川は教室から出て行った。足取り軽そうに出て行く縁川は、何処かこのブーイングを喜んでいるようにも見受けられた。
ブーイングが続いていた教室が、徐々に静かになっていく。……かと思ったらそうでもなかった。生徒たちは思い思いの場所に移動し、その周辺にいるもの同士で影人の話をしていた。「影人はある意味正義だろ」とか「名前的に夜しか行動できないんじゃない? マジうけるんだけど」とか。教室に影人がいるとも知らずに話している風景は、実に滑稽だと奏は口元を歪ませた。
「山中、ちょっと話しある」
席をだるそうに立ち上がりながら奏は言う。その奏と、奏に呼ばれたヨミにクラス中の視線が集まった。何故か学校のマドンナ的存在として男子に人気があるヨミが、隠れファンクラブがあるだのないだのと色々噂になっている、後輩が入ってから株が上がり始めた奏。美男美女(笑)が何処か別の場所に移って話すとしたら、それは愛の告白か、実際はもう付き合っていて一緒に帰る予定を立てる為なのではないかと、噂好き女子たちは一斉に頭の中で妄想を繰り広げ始める。奏に呼ばれたヨミの怪訝そうな表情を見たら、その二つの可能性は有り得ないだろうと思うのだが……。
「奇遇ね、私も奏に話があるの。色々と」
目の笑っていない笑顔を奏に向ける。奏が気まずそうにぷいっと違うほうを向き歩いていったのを見て、ヨミも立ち上がる。二人の間には大勢の生徒がいるのに、二人だけ違う世界にいるかのような独特の雰囲気が教室内を包み込んでいた。
ヨミは後ろの席に座っているフルリナに社交辞令を思わせる微笑を向け奏の後をついて行く。扉を開け、廊下に出た奏が開け放した扉をヨミも廊下へ出た後でガラガラと音を立て閉める。それから数秒後、何かの縛りが解けたかのようにまた影人の話や世間話を始めたのだった。