複雑・ファジー小説
- Re: 殺戮 は 快楽 で ......キャラ募集一時〆切り ( No.43 )
- 日時: 2012/02/20 22:47
- 名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: 5bYoqzku)
- 参照: 失意の終焉——死をもって生を咎める
参照200突破記念短編。
短編が苦手な柚子です。
グダグダです、何がしたかったのでしょうか……。
『アイスを買うだけ』
——アイスというのは……。
*
とある日曜日。照り付ける強い紫外線が快晴という事を主張していた日だった。
何時にもまして深く遠くまで揺れる陽炎が、例年よりも気温が高いことを表していた。
「(地球温暖化め)」
目つきが悪く、その容姿は何処か不良を思わせる。髪型がオールバックというのもそれを印象付けるものだったのかもしれない。
とめどなく流れ落ちる汗を其の侭に、彼は目的地へと向かっていた。
——事の発端は、二日前の伊野塚の言葉……。
「明後日、親交も図るって意味も込めて芥くんと信二くんには買い出しに行ってもらおうと思います!」
その瞬間、ビルの一角が凍りついた。いや、凍りついたというよりは凍らされたといった方が正しいのだろうか。
“影人同士の干渉は禁ず”とか言っていた張本人が、干渉することを目的の買出しを頼んだのだ。
その場に立ち会っていた奏は飲んでいた清涼飲料水のボトルを口を開けたままでコンクリートが剥き出しの床に落とす。何時もはその様なことが一切ない奏が、だ。
芥も信二も愛も咎も、それぞれデスクワークをしたりご飯を食べたりゲームをしたりしていたが、その行為を全てやめ伊野塚のほうを見たのだ。
空気を凍てつかせた本人である伊野塚は何も気にしていないようでニッコリと笑みを浮かべていた。
「オレがお前と買い出しか」
「俺がなんでお前なんかと」
仲良くは成りそうにないとは思っていたが最初から二人の間に亀裂が入っているケースは珍しかった。
仲の悪く見えるヨミと奏でさえ、最初は円満に過ごしたのだが。
「まぁまぁ。ちゃんと行ってくれたら能力の無差別乱用に近いくらいはやらせてあげるからさ」
その言葉がいけなかったのだ。
甘い蜜を巧みに使い、獲物を引き寄せるような悪魔のささやきが。
もちろん、二人の答えは「YES」だった。伊野塚が異論を認めるような男でないことは二人も良く知っていた。
「それじゃ、よろしくね。買出しリストは後で渡すから」
悪魔のささやきに天使の笑み。
その二つが二人を狂わせていたのかもしれない——
*
「俺を待たせてんじゃねぇよ」
「オレはオレで急いで来た積りだったんだ」
額の汗を汗でぬれている右腕で拭う。芥は今だけ熱を吸収しにくそうな赤い髪の信二が羨ましくなった。
二人は口数さえ少なかったものの、口に出したのは全て相手に対する悪口。互いに互いの機嫌を損なわせていっていた。
そしてその状態のまま入っていったのは大型デパート。ドアが開いた瞬間に体を包み込む冷気がこの上ない至福だった。
ただ、そんなことで時間を使っている場合ではなくさっさと二人は全国展開している大手アイス屋へ向かった。その店に近づけば近づくほどに香る甘い匂いが暑さに遣られていた二人には嬉しかった。
「オレは行かない。お前に任せる」
「はぁ? 何言ってんだよ」
「後日、何か奢ろう。それで手を打たないか?」
「……別にいいけどよ」
そんな小声の作戦会議の後、信二がレジへ向かう。信二としてはクレープでも良かったのだが、買出しリストに載っていたのはお持ち帰りようのアイスのセットだったためクレープはあきらめた。
注文してから数分で12個入りのアイスのセット2つが用意される。
この灼熱のなか帰ると思うと気が引けるのだがアイスが溶けるのも時間の問題だと、二人はデパートから出る。
ドアが開いた瞬間に体を包む熱気には気持ち悪さ以外を感じることは出来なかった。
嗚呼、これが夏というものか。
当たり前の思いを胸に抱きながら芥と信二は陽炎の中へと歩き出した。