複雑・ファジー小説

Re:   殺戮 は  快楽 で キャラ募集なう+参照600感謝! ( No.74 )
日時: 2012/03/17 23:51
名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: vQ/ewclL)

「まぁ、討論になりそうだからやめよっか。私、争いは嫌いなんだ。
 それに、木月君は答えてくれたし。棘もくれた。その棘は……咎に対してと、彼の持論に反しているかどうか、というてんの棘。
 私の質問には、しっかりとした回答は受け取れなかったけどね」

 苦笑しながら、伊野塚は言う。無駄な討論が嫌い、というのは前々から伊野塚が言っていたことであったため、意外そうな顔をするような人は居ない。居たとしても、誰も気にしなかった。
 奏が幹部組みに向けた棘も、伊野塚が綺麗に回収したため、一部の幹部達は遣る瀬無い表情を浮かべていた。——唯の影人に、幹部が誡められかけたのだ。にこやかな表情を浮かべられるような幹部は、一人しか居なかった。

「なー、伊野塚さん」

 徐に幹部達の方から声が出る。その声の主、三日月双子の弟である三日月下弦に全員の視線が集まる。奏の棘を気にしていないのか、ニコニコと笑みを浮かべていた。

「三日月弟くん。どうしたんだい?」
「日稲の表情が怖いんで、今日の任務とか教えてくれないっすか? 隣に座っている身として、少し緊張するんすよ。
 ほら、日稲強面だし。木月兄の棘で眉間のしわが恐ろしいんす」

 下弦の言葉に、今度は日稲(ひいな)と呼ばれた男に視線が移る。下弦の言ったとおり、眉間には深いしわが刻み込まれていた。小さく「こわい」と呟く声も聞こえた。

「……、うん。わかったよ。
 それじゃ、全員に今日の任務について説明をする、前に今日の任務に行く影人達の名前を呼ぶ。
 存在の有無を確認するために、必ず返答をするように」

 一瞬にして、室内の空気に緊張が走る。
 伊野塚の声色が、変わったためであった。それほど、伊野塚の影響力は影人の中で大きいものだった。

「木月兄」
「うーい」
「三日月双子」
「はいはーい」
「……了解」
「木月妹」
「はーいっ」
「山中ちゃん」
「はいっ」
「高木君」
「はい」

 伊野塚が名前を呼ぶたびに、色々な場所から声がする。だるそうな声や、元気の良い声など様々だった。

「以上! 計六人以外の影人は直ちにこのビルから出るように。解散!」
「「はいっ!」」

 一斉に影人たちが立ち上がり、名前を呼ばれた六人と咎以外の影人たちはビルから出て行った。最後の一人が室内から出て行くまで、伊野塚はしっかりと出入り口に使用される扉を凝視していた。盗聴器や隠しカメラなどを気づかれないように設置する人間の有無を知るために。
 自然と、扉を見ていた伊野塚の周りに六人が集まる。六人の席は少し離れているため、伊野塚の周りに集まって必要最低限の声量で済むようにするためだった。

「でわ、本日の任務について発表する。本日の任務は、中学生の監視。
 奏くんが、前に任務でアビリティを使ったコンビニのバイト店員君。実は弟が居たらしくてね。それで、影人たちに強い憎しみを持っているらしいんだ。
 その子が、先日の私を兄さんと呼ぶ、ある青年が言っていたんだけどアビリティを手に入れたらしい。それで夜な夜な、闇にまぎれる影人を探して駆逐しようとしているんだ」

 一度、伊野塚が口を閉じる。奏は面倒くさそうな表情を浮かべていた。自分が殺した人間の肉親が、自分に憎しみを抱いていると知ったのだ。面倒くさいとしか思うことが出来なかった。
 ヨミや三日月双子(といっても兄だけ)、愛がしっかり真剣に話を聞いている中、新羅はどこか浮かない顔をしていた。だが、それに誰かが気づいても「どうしたの?」と聞くものは居ない。プライベートまで深く干渉するということは、パートナーしか許されない暗黙の了解があったのだ。