複雑・ファジー小説

Re:  殺戮 は  快楽 で ..... 姉が絵を描いてくれたよ! ( No.84 )
日時: 2012/03/25 17:53
名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: vQ/ewclL)

第六話『今晩時刻午後九時半』


 六人は伊野塚に言われたとおり、奏の部屋に来ていた。ヨミと同居しているため、家具やカーテンなど可愛らしいデザインのものもちらほら見られる。この家には、ここにいるヨミと奏以外の影人たちは入ったことがなかった為、皆面白そうなものを見つけてはいじったりしていた。
 A型潔癖症の奏にとっては、他人に自分のものを触られたくない。指紋を付けられたくない。と考えていたが、口に出すと態度がきつい、悪い人だと思われると考えでかかった声を飲み込んだ。

「おにーちゃんって意外にお部屋大きいんだねっ!」

 純粋で無垢な笑顔を向ける愛。眩しい……眩しいよ愛! と心の中でシスコンを発揮しながら奏は「さほど大きいわけではないけどな」と苦笑混じりに言う。三日月双子は、同じマンションに住んでいるため特に散策もせず、ソファに座っていた。新羅は愛に手を引かれ、終わらない家宅捜索もどきを手伝わされていた。

「……メインは、俺と奏で行動しよう」

 四人分のコーヒーと二人分のココアを運ぶヨミに、上弦は告げる。先程まで隣にいたはずの下弦は、奏を追いかけ寝室へと入った行った後だった。

「いいですけど……。愛ちゃんはどうするつもりなのかしら」

 白いローテーブルにコーヒーとココアを慎重に置きながら、ヨミは言った。

「奏の妹は、下弦に任そう」
「愛ちゃんのパートナーは新羅君よ?」
「ああ、知っている。
 相手は、俺たちも良く分かっていないアビリティ保持者だ。新羅に木月妹を任せられない。もし、監視をする俺たちではなく愛が狙われたらどうする。新羅では対処しきれないことがありかもしれない」

 たしかに……、ヨミは小さく呟いた。
 小学生と中学生のコンビで行動させられるほど簡単な任務じゃない……。もし、新羅君と愛ちゃんが狙われて危機的状況になってしまったら……。
 ——考えるだけでも嫌

「そ、そしたら誰か救護係とかがいたほうが」
「そろそろ来るだろう。俺の知り合いの変なアビリティ保持者が」

 ヨミが「え?」と言おうとした瞬間、リビングの窓が音を立てる。——割れたのだ。防弾ガラスの窓が。警備セキュリティなどはつけていなかったため、ブザーが悲鳴を上げる必要はなかった。
 ガラスの破片の中から出てきた二人の少年少女。ガラスで怪我をしているかと思ったら、一つも怪我はなかった。

「きたか」
「きたよ」
「来いって言ったの君だろ。おーじ」

 王子というな! なんて上弦の叫びを右から左に聞き流す彼らに、ヨミは開いた口を戻せないでいた。そして、何故新羅も愛も奏も下弦も戻ってこないのかと疑問が生まれた。
 それに気づいてか窓から入ってきた少年少女はヨミにニッコリと微笑みかける。

「僕の名前は馬追 零(まおい ぜろ)これでも28歳さ」

 ニッコリと微笑む零は、何処からどう見ても小学生そのものであった。

「僕のアビリティの代償でね、段々体だけが小さい子供見たくなっていくんだよ。
 そんな僕のアビリティは、不動不老。別名、永遠の縛りっていうんだ。厳つい名前だろ?」
「俺ノ名ハ、馬追 千万(まおい ぜんま)」
「零ノ兄弟ダ。一応、27歳」
「俺ハ、アビリティノ代償デ体ガ小サイママダ」

 千万は、何度も口を閉じ深呼吸しまた話す、を繰り返する。横で零が「ある組織に喉を壊されてるから、一回で長く話せないんだ」と補足をした。上弦は、飽きたのか、笑ってよいとも! を見ていた。ただ、面白いはずのバラエティ番組を真顔で見る辺りすごいな、とヨミは軽く呆れた。

「俺ノアビリティハ、治癒守護(アイゼン・メイデン)。動物ノ死ト、無機物以外ナラ、ナンデモ直セル」