複雑・ファジー小説
- Re: 殺戮 は 快楽 で ... 保留解禁! ( No.96 )
- 日時: 2012/06/02 22:44
- 名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: hap96gvm)
- 参照: 保留解禁
「単刀直入に言うよ。君たちは、能力に頼りすぎて個々の力を発揮できていないままだ。
だからだよ。私が、上弦くんとヨミちゃんを贔屓にするのは。能力にばかり頼らない彼らを、私が贔屓するのは」
普段と違う、強い口調で伊野塚は言い放つ。白衣に手を差し込んだまま。きつく睨み付ける鋭い視線は、目の前にいる裏切り者の彼らを凍てつかせた。
上弦も、ヨミも、彼らと同じように驚いていた。彼らに放った、伊野塚の発言に。二人とも、贔屓されているという実感がなかったせいでもあるが、自分たちが能力に固執しすぎていないと言われたのが、うれしかった。
自分たちは能力に甘えていると、思っていたのだ。敵を討つときも最終的には能力を使用していたため、銃や剣などで息の根をとめたことがない。それでも、贔屓をしてくれていた伊野塚に感謝の念を抱いた。
「言葉も返せないかい? それじゃあ仕方がない。私の能力の秘密を知ってしまったのだから、逝くしかないね」
「な、何言ってるのよ! 伊野塚さん! い、いえっ、ボス! 私たちは仲間じゃないの!?」
手のひら返し。一番この状況を正しく伝えることの出来る言葉だ。伊野塚が殺すといった瞬間に、態度を変える。「本物の下衆だな……」上弦も小さく舌打ちをし、つぶやく。
表情では笑顔を見せている伊野塚も、内心上弦と同じことを思っているのだろうか。伊野塚の横顔と上弦の横顔を交互に見つめながら、ヨミは心に疑問を植え込んだ。
「それじゃあね。——ルシファの裁き」
「ちょっ、待って!!」
彼らの叫びも虚しく、伊野塚はぶつぶつと必要な言葉を紡いでいく。紡ぐ言葉が終わりに差し掛かるにつれて、伊野塚の周りが青白く光り始める。その色は、青白く描かれる火の玉を思わせた。
髪の毛が、白衣が浮きあがる。まるで、下から何者かがでてきているかのようであった。
「驕れた君たちを、僕は切り捨てるよ」
右手をまっすぐ伸ばし、ひじの内側に左手を沿え力強くひじを握る。すると青白い光が徐々に開いた右手に集まり始めた。それを見て、彼らは顔を蒼白させる。
上弦、ヨミには伊野塚の周りに広がる青白い光に、彼らの表情が照らされているように見えていた。