複雑・ファジー小説

Re:  殺戮 は  快楽 で  最新話6月17日更新 ( No.104 )
日時: 2012/06/24 20:30
名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: Oiud.vUl)

 同刻、別の道から進む二人は不気味なほど赤い月明かりに照らされていた。街灯が一つもない道を選んで歩くが、必ず月が二人を照らし影を伸ばす。
 小さく「影に潜めねぇじゃん」と奏が呟くが、下弦はどこか嬉しそうに「今日は俺の日だなぁ」と言った。それが、どんな意味を指すのかはそのとき奏には理解し得なかった。

「なぁ、奏。俺さぁ上弦と双子やっていけない気がする」

 腕を頭の後ろで組み、漆黒に濡れそぼった空を見上げながら下弦は言う。口元には歪笑が浮かぶ。言葉の真意は、掴めなかったがきっとそのままの意味だろうと、奏は一度瞬きする。

「やってけないなら、それでいーんじゃないすかね。取り敢えず、俺は早く壊したいんですよねー。
 ……ターゲットに親族いると思ってたけど、まさか影人がばれるとは思わなかったので」

 ギリと歯が力いっぱい擦り合わされる音を、響かせる。それに下弦はうっすらと笑った。“どんまい”とでも言いたげに。

「まぁ、それは仕方ないじゃん? そこまで、伊野塚さんも調べてなかったんだしさー。俺らだけの責任じゃないってことは確か確か」

 うへへーと言いながら、道端にあった小さな石を宙に蹴り上げる。ふわりと放物線を描いた石は、からんからんと音を立て道端の鉄格子の中に、吸い込まれていく。
 瞬間的に、周りの空気が変化したのを二人は感じ落とさなかった。二人の周りの和やかでやんわりとした雰囲気が、コンマうん秒程度で様変わりしたのだ。
 緊張感漂う、修羅場のような空気に。同時に、どこから来ているかもわからない殺気が、痛いほどに肌に突き刺さる。