複雑・ファジー小説

Re: 魔術と人造人間の一日。【コメ求む!!】 ( No.7 )
日時: 2012/04/03 14:33
名前: 刹那 ◆V48onzVAa6 (ID: vWRv9TUU)


二話(1)

裕貴達は戦闘命令を受け、敵が既に襲来したのか確認しようと窓に駆け寄る。
 すると窓の向こうの校庭では、ちょうど教師達が学校の敷地の端で魔法陣を描いているところだった。
「多分、ここを世界から孤立させようとしているんだろうな。戦場(フィールド)がここだけになるように」
と裕貴の左隣にいた颯斗が呟く。
あの魔法陣が完成したら、術者が解くまでは世界が学校の敷地に干渉することはできない。例え宅配便が来ても、PTAの五月蝿いおばさんが来ようともバリアで跳ね返されるだろう。
「—————ってことは」
この場所は隔離された場所。期限付きの新世界なのだ。
現在ロシアの魔術師がこの敷地内にいない場合、それは守りを意味する。だが、それをすれば『旧世界』の民である七十億近い人物は間違いなく死へ直行だ。
それを阻止するべく、戦うのだから—————。
すると、今度は右隣の剣が力強く確信を持ったように頷き、
「間違いない。もうこの学校に、ロシアの魔術師はいる」



ロシアは、厳密に言えば昔のロシアではない。
魔術が武器として使われるようになった頃に帝政国家に戻ったのだ。
皇帝は総司令部の司令部長。すなわち現在はグレゴリウスだ。
「……」
グレゴリウスは司令部長の室の中、革の玉座とも言える椅子に腰掛けながら思案に耽っていた。
(それにしても……。あれはどこに消えたのだろうか)
偵察に一月前位に向かわせた者。
その者が、いつまで経っても戻らない。
(気配はある……。だがどこに行ったものやら)
気配で確かな場所を掴もうと瞑目しても、後少しというところで魔術に弾かれる。
(……ッ!!)
苛立ちを抑えるようにグレゴリウスは爪を音がする程に噛んだ。
(この私を弾くとは……)
先程の魔法陣には見たことのない文字も並んでいた。あれは恐らく『科学文字』と呼ばれる科学魔術に使われる古代語だ。
ロシアは科学魔術が浸透していない。まだ研究段階のものが多いそれは、日本やアメリカ、ヨーロッパなどかつて文明を先進した国が開発しているのだから。グレゴリウスが知らないのも道理だろう。
(お前は……私を裏切ったのだな)
所詮は駒。されど駒。
「私を愚弄した罪は大きいぞ?クハハハハハ……」
怒りに満ちた笑いが、不気味な空気を伴い間を震わせた。