複雑・ファジー小説

Re: 鏡の国の君を捜して…… ( No.1 )
日時: 2012/07/20 11:26
名前: クリスタル (ID: YOt4GnQH)

Prologue 【Je vous ai trouvés du pays du miroir   〜鏡の国の君を見つけて〜】



「ねえ、お姉ちゃんはどうして泣いているの?」

 幼かった私は、一人の少女に話しかけた。

 彼女は、一瞬だけ、私を見てとまどったけれど、すぐに笑顔を作った。

『お姉ちゃんはね、取り返しのつかない…償っても償いきれない事をしちゃったんだ』

「どんなことをしたの?」

 そう聞くと、少し悲しそうに笑う。

『そうね…これは望んでやったんじゃないの。誰かが防ぐ事も、抗う事もできない、運命だったの』

 長くて綺麗な茶髪のその少女は、何処か、見覚えの有る顔だった。

「ねえ、お姉ちゃんは誰なの?」

『ふふふ。名乗る時は自分からっていうのが礼儀でしょう?』

 名前…名前…私の名前…

「私、れいしーっていうの。お姉ちゃんは?」

 私の名前を聞くと、また少し、戸惑ったように見えた。

 彼女は私の質問なんて無視して、笑った。今度は作り笑顔ではなく、純粋に楽しそうだった。

『レイシー…いい名前ね』

 それでも、その笑顔はどこか悲しげだった。

「お姉ちゃんは、どうして悲しそうに笑うの?」

『悲しそう? あら、そんなつもりは無かったのに、顔に出ちゃったみたいね』

 彼女は私に背中を向けて、何処かへ去ろうとした。

「まってよ! お姉ちゃんは誰なの?」

 彼女は立ち止まって、顔を向けず話しだした。

『レイシー…。わたしは取り返しのつかない罪を犯した。どんなに償っても償いきれない。何千回謝っても許されない』

「おねえちゃん?」

『だけど、さいごに言わせて……』