複雑・ファジー小説
- Re: 鏡の国の君を捜して…… ( No.12 )
- 日時: 2012/05/10 20:53
- 名前: クリスタル (ID: 3Em.n4Yo)
突然、女性が私のわき腹に蹴りを入れる。私は蹴り飛ばされた。
雨で濡れた庭の芝生にダイブする。わき腹と膝とひじに強い痛みが生じる
「ぐぁいッ…ツ…!」
「わ、なんか凄く痛そうな声ねぇ」
自分で蹴ったクセに、他人事のように振舞いやがった。凄く痛いんだよっ。すりむいたよ、ひざっ。
さっき自分がいたところを見ると、さっき猫から人になった奇怪生物が、短刀を持って立っていた。瞬間移動?
……もしや、あの女性が蹴り飛ばしてくれなかったら、死んでいた?
ん? あの、猫から人になった子、何処かで見たことの有る顔だ。
…確か、7年位前に、失踪したとかで、ニュースでよく見たことのある。名前は、確か…———————————————
「サラ・ベルナール?」
「あれ、なんで僕の屍の名前知ってるの? まあ、いきなり失踪したら、有名にもなるか……」
「しかばねぇ?」
そういえば、謎の女性が空気に成り始めてる。ホラ、私の家の靴とか、整え始めてるよ。わざと左右が逆になるように。
何の嫌がらせなんだろう。痛くも痒くもない。
「オイ、クソウサギ。何、人様の家の玄関を荒らしてるんだよ。無駄な嫌がらせはやめたほうがい」
サラさんが、一応注意した。
「煩い猫ね、チェシャは。それにあんた、レイシーを殺しに着たんじゃないの?」
適当に応答して、再び靴を整える。左右逆になるように。
その5秒後、女性が血相変えて、叫んだ。
「…って、そいつ、レイシー!?」
いきなり立ち上がり、綺麗に左右逆に整えた靴と、チェシャと呼ばれた少女を蹴散らして、私のそばに走ってきた。
驚いて、軽く後ずさる私の腕を無理やり掴んで。
「あ、あ、あんた、レイシー!? レイシー!?」
「レ、レイシー。です」
なんだろう。この名前、珍しいのかな。
「事情が変わった!」
古くて、認知度の低いネタを披露してきた。この女性、変だ。
「あんたは、鏡の国に着なさい!」
「はぁ?」
さっきから分からない言葉が飛び交うし、命狙われるし、怪奇現象が起こるし、頭が混乱してきた。
鏡の国だの、失踪少女出現だの、屍だの…全っ然理解できない。
タダひとつ、理解できたことは、『私、ピーンチ』
「ふば、ふざくる、ふざけるな!」
チェシャと呼ばれた少女が慌てて喚いた。凄く残念な事に、台詞かみかみなんだよね。
「レイシーが鏡の国に着たらっ…アリスはっ」
「ボンジュールッッ!」
古くて、認知度の低いネタを使って怒る。私もチェシャも「え?」という顔で、立ち尽くす。
「私は、目的の為だけに動いてるのよ。それを他人に邪魔する権利は無いわ…!」
もう、何も理解できない。第一アリスって誰。
「クソッ…お前も死ねぇぇぇぇぇぇえええぇぇぇぇぇ!!」
チェシャが女性に飛び掛る。
ドスッと、刃物が肉体に突き刺さる音がした。
女性の左手のひらに短剣が突き刺さっていて、しかも貫通している。
大量出血。
「痛っ…このっ…ドブ猫がっ」
刺された事に腹を立てて、女性もチェシャを蹴り飛ばして反撃した。
5メートルくらい吹っ飛ぶ、チェシャ。私の家の塀にぶち当たって、ピシッと、その塀にヒビが入った。
そして、彼女は動かなくなった。それよりも女性の脚力が怖くなった。
「え、死んでない? あの子、死んでない?」
女性も、予想より吹っ飛んだようで、驚いていた。
「…ひ、ひ、人殺しっ!」
「わ、わざとじゃないのよ。ちょっと、邪魔だったから…。それに、まだ死んだとは限らないし、脈は、動いてるはず」
私は、一応脈を計る。もし、死んでいた場合、どうすればいいのだろうか。
トク、トク、トク、異常に早い。早いけど、動いている。
「生きてますよ!」
私と彼女もとりあえず、ほっと一息。