複雑・ファジー小説
- Re: 鏡の国の君を捜して…… ( No.19 )
- 日時: 2012/03/09 06:27
- 名前: クリスタル (ID: 3Em.n4Yo)
少し間が空いてから「さて、と!」と、無理やり笑顔に変換して、エリーゼさんは立ち上がった。
「そろそろ行くわよ」
「どこに?」
「空気読め!」
私も、この流れだと鏡の国以外の物は考えられないなーと、うすうす気付いていた。
でも、鏡の国って、どんな所なのだろう。そもそも、行ってしまったらお母さんは心配するだろうし・・・。
「エリーゼさん」
「え、あたしのこと、エリーゼって呼ぶつもり? まあ、別にいいけど」
「私、鏡の国にはいけません」
きっぱりと断った。エリーゼさんが私を連れて行きたがる理由もわからないのだから、その理由に同意できない限り、絶対に行かないつもりだ。
「ダメよ。あいつは、あんたのいなかった7年間、ずっと捜し続けたんだから・・・」
『あいつ』?
「あいつって?」
エリーゼさんは、私の事を軽くにらみつけて、ため息をついた。今度は、肺活力を鍛えようとはしていなかった。
「ここまで綺麗さっぱり忘れていると、あいつに同情してきたわ」
何のことだろう?
「で、あいつとは?」
「鏡の国であんたを待っているわ」
「私、いきませんよ」
「馬鹿も休み休み言えー」
「いきませんって」
「ごーてぅーカガミノクニ」
「いけません。お母さんが心配する」
最終的に無理やり腕を引っ張られて、鏡の前まで来た。
エリーゼさんの左手のケチャップは、止まる事を知らない。それどころか、ケチャップの泉になっているのが現状。床に滴り、ブラッディロードを作り上げる。
「いきませんって! 無理やり連行しても、いきません!」
「アハはー。これ、人さらいって言うのかしら? もしくは、拉致とか?」
私が激しく暴れるのを、ケチャップの泉になっている左手で押さえるので、私の服が赤黒くなる。
「あ、エリーゼさんって、左利き?」
「正ー解。良く分かったわね。今日、一番得点の高かったレイシーさんを、鏡の国に連れて行ってあげまーす」
「クイズ番組か!」
逃げようとする私を右手に持ち替えて、ケチャップの泉を鏡につける。べっとり。
「いやだ! 鏡の国なんていかないっ!」
「別に、絶叫マシンに乗るわけじゃ有るまいし。そんなに怖がらなくていいわよ?」
鏡から、謎の光が放たれる。
「ぎゃああああ! いやだぁああああああ! 人さらいがぁぁあああああ!」
さようなら、フランス。
Ⅰ【Un visiteur blanc comme neige 〜雪のように白い訪問者〜】 完