複雑・ファジー小説

Re: 鏡の国の君を捜して…… ( No.20 )
日時: 2012/03/11 11:51
名前: クリスタル (ID: 3Em.n4Yo)

Ⅱ【Le chapelier qui attend 〜待ち続ける帽子屋〜】


 とある森の奥の小屋、小さな帽子屋を営業する2人の男がいた。

 …カタカタカタ……カーンカーン……

 ミシンの音と、何か硬いものを金づちで叩く音が鳴り続く。

「また、帽子ができたぞ」

「わぁ、やっぱり師匠はすごいですね」

 天パの少年はミシンを使って、直毛の青年は、少年とは全く違う方法で帽子を作っていた。

「お前もミシンを使わないで作れるようになれ」

「……ハイ。(僕が生きているうちは無理だ)」

 また、ミシンの音と金づちの音がなり続く。

 二人のいる小屋の前には、大きなコケの生えた大木が立っている。その大木が突然光りだした。

「………師匠、また新しくあっちの世界から来るみたいですよ」

「そうか。また騒がしくなるな」

 …カタカタカタ……カーンカーン……

「次は、生きて帰れますかね?」

「さあな。生きて帰って欲しいものだが、俺達には限界なのかもしれない」

 青年は、悲しそうに笑う。

「前は残念でしたが、今度は上手くいきますよ」

 少年の言葉を聴いて、無理やり笑顔を作った彼だったが、目が笑っていなかった。

「白のクイーン……どこに居るんだろう、な」

 …カタカタカタ……

「そういえば、師匠は彼女を見つけてどうするつもりなんですか?」

「会えればそれでいい。あいつが生きていてくれれば、それだけわかれば何も望まない…」

 …カタカタカタ……カーンカーン……