複雑・ファジー小説

Re: 鏡の国の君を捜して…… ( No.28 )
日時: 2012/04/20 18:52
名前: クリスタル (ID: 3Em.n4Yo)

「分からせてください」

「餓鬼が、調子乗るな」

 エリーゼさんが怖かったので、黙っておいた。


「閑話休題。本当の本題に入りたいんだけど」

 チラッと私とノエルを見る。

「餓鬼は外に出ていてくれるかしら?」

 ほほぅ。これは「アダルトな……」ことをするつもりですか。と、言うつもりだったけれど、ノエルが強引に私の腕を掴んで、扉の無くなった小屋の外に引っ張り出したので、いえなかった。

「何するのよっ」軽く怒鳴った。

「ああいうことを言うと、僕が殴られちゃいます、二人に」

「あらら」

 エリーゼさんは「無理に追い出すのは、かわいそうだけど、まあ、仕方が無いから〜」などと言いながら、ティーポットと、ティーカップ等のティーセットを渡してくれた。

 早速ティーカップに紅茶を注ぐ。

「あれ?」

 なにやら、紅茶がぐつぐつと煮えたぎっている。注ぎたてのカップから、その熱さが伝わってくる。

「ノエル、これ…絶対に飲めないよね?」

「…そうですね」

 何の嫌がらせなんだろう。煮えたぎる紅茶なんて飲めるわけも無く、ただ、冷めるのを待って紅茶を眺める。

「………………………………………」

 気まずい空気だ。思春期の女子と男子を同じ空間に放置するなんて。

「レイシーさん……レイシーさんは、純フランス人ですか?」

「え? ハーフかどうかを聞いている?」

 このタイミングで全く意味不明な質問だ。気まずさを紛らわす、その場しのぎ?

「はい。もしかして、この世界の人なのかなって」

「え? 私のことエイリアンだと思ってるの?」

 ノリがイイ私は、人差し指を出して、「E,Tー!」と、言って見る。

 ノエルは、苦笑いで「いえ、そういう意味じゃないです」といいながら、人差し指を出す。なんだかんだで、空気を読んでくれている。

「えと、この世界っていうのは、フランスとか、ドイツではない、地球であって、地球じゃない…異世界? 地獄? 四次元?」

 自分でも理解できていない様子。

「思ったんだけどさぁ。地獄って、スペース無くない? 地球の中心部にはマントルがあるから、地獄のスペース無いじゃん」

「昔の人々が想像した事に理屈は通用しませんよ」

 ノエルはそう言って、まだぐつぐつと煮えたぎる紅茶をそっと飲んだ。火傷しないだろうか。


 餓鬼二人を追い出して暫く、小屋の窓からその2人の様子を眺めていた。あ、ノエルが煮えたぎる紅茶を飲んだ。

 キルが作った紅茶。味は保障できるが、なぜかいつも煮えている。

 お湯を沸かしている段階では、沸騰したてのお湯のはずなのに、こうやってカップに注ぐと温度が以上に上がっている。前にも、紅茶を出してもらったことがあったが、そのときは熱すぎてコップが溶けていた。

「あんた、熱でも有るの?」

「平熱が32度くらいだが?」

「…きっと死神が取り付いているのよ」おいたわしや。
 おそらく、キルは血の巡りが悪い。

「さて、本題に入るけど」あたし、今日一日で何度本題に入ったのかしら。

「お前の本題はいくつある」

 適当に生きている男に、普通に突っ込まれてしまった。突っ込みは、適当じゃなかった!