複雑・ファジー小説

Re: 鏡の国の君を捜して…… ( No.3 )
日時: 2012/07/20 12:06
名前: クリスタル (ID: YOt4GnQH)

Ⅰ【Un visiteur blanc comme neige  〜雪のように白い訪問者〜】


「シロウサギさん、私、そろそろ死んじゃうのかな…」

 病室の、窓際の白いベッドの上。昨日とは打って変わって、弱気な彼女。

「エリーゼ、そんなこと言わないで。病は気からっていうでしょ! そんなんじゃ、直るもんも直らないわ!」

 信じていれば、直るはずだ…。

「ありがとう…」

 彼女がもう永くないのは、誰もがわかっていた。後は、死を待つだけなんだって。あたしも、そして彼女も。

「シロウサギさん…これ、貰って」

 澄み切った空の様な、美しい青のリボン。いつもエリーゼが大切そうに持ち歩いていた。

「え? これは、エリーゼが大切にしている…」

「そう…。一番大事な友達に貰ってほしいの。元々、病気が治ったらあげようと思ってたの。もう、渡せなくなるのがいつだか、わからないから…」

「エリーゼ! そんなこと言わないでってば!」

「もうわかってるんだよ! どうせ、直らない。死を待つだけだって。シロウサギさんも知ってたんでしょう?」

「………………………………………」

 無理やり笑顔を作る彼女に、あたしは何もいえない。

「シロウサギさんは、前に言ってたね。人間の屍が必要だって。もうすぐ、私は死ぬから……」

「エリーゼ…」

 エリーゼは、今にも泣き出しそうな、壊れそうな笑顔を、無理に作っていた。

 そんな彼女に、あたしは何が出来るのだろう。考えても、答えは出なかった。

「あ、もうこんな時間だね。また明日、着てね」

 窓の外を眺めながら、あたしに言う。表情は確認できないけど、声は震えていた。

「…うん…また明日…」

 だけど、それが最後だった。笑ったエリーゼを見られたのは。