複雑・ファジー小説

Re: 鏡の国の君を捜して…… ( No.38 )
日時: 2012/04/04 16:11
名前: クリスタル (ID: 3Em.n4Yo)

Ⅲ【L'erreur du chat noir 〜黒猫の過ち〜】


 ぐしゃっ。目の前で一人の少女は殺された。

「きゃあああああああああああああ!」

 叫び声。耳のいい僕は、鼓膜が破れそうだ。

 ぐちゃっ。その人も殺される。

「ねえ、チェシャ。屍って、穴が開いていても使える?」

「うん…多分使えるよ。ありがとう」

 彼女の綺麗な茶髪は、真紅に彩られて、ハートの宮殿の薔薇畑を思わせ…ないか。

 僕のせいで死んだ二人。片方は全く見覚えが無いが、もう片方は何処かで見た気がする。

 そうだ、「シロウサギの…」

 元々、長生きはできないようだったが…シロウサギが得意げに話していた、『親友』とか言うやつが死んでしまった。

 『親友』がどういうものなのか、僕にはわからなかったけど、シロウサギは「かけがえのない、大切なものだ」と語っていた。

 あのウサギは悲しむだろう。あいつとは、何の関係もなかったが、無関係のあいつを悲しませていしまう……。

 丁度、窓からあいつが入ってきた。

「えりー、ぜ?」










 僕があんなお願いしなければ、こんなことにはならなかったのに。

「なん、で? えりーぜ、しん、でなんか、ない、でしょう?」

 初めて聞く、シロウサギの震えた声。いつもは、自信にあふれた明るい声で、どんな時もポジティブだった。

 赤く汚れた彼女は、いつもと変わらぬ明るい声で

「チェシャ、屍、二つあるけど、どっちにする?」

 無邪気な笑顔。