複雑・ファジー小説
- Re: 鏡の国の君を捜して…… ( No.39 )
- 日時: 2012/04/29 07:32
- 名前: クリスタル (ID: 3Em.n4Yo)
ぱちり。
気が付いたときには、僕は何処かの街の病院にいた。
ウサギに蹴り飛ばされた時、あばら骨にひびが入ったらしい。ウサギの脚力をなめていた。
医者の話によると、「二週間は安静にするように」との事。
部屋には行ってきた50代前半のイギリス人っぽい、頭がバーコードになっているドクターに話しかける。
「僕、もう元気なんで、帰ります。さーよーならー」
そういい捨てて、いつもの癖で、窓から外に出ようとしたが、もちろん止められた。
「いやいやいや! きみきみきみ! 元気ってきみ! 骨折だよ? きみ! そんなに簡単な直られたらきみ! 昨日・今日で直られたらきみ! 困っちゃうよ、きみィィ!」
実にうっとうしい喋り方だ。殺してもいいだろうか?
ドクターの声が大きすぎたせいで、50代前半のおばさん看護師も部屋に入ってきた。
「バーコード・ドクター、病院では、静粛にお願いします」
「だーれがバーコードだ、きみ! 私の名前は、ベーコウドーだからな! 5年も働いているわけなんだから、しっかり覚えておくれ! きみぃ」
なぜだろう? 2人とも、二階の窓からエスケープを試みる僕に突っ込みを入れない。ここ、二階だよ? しかも窓…!
もしや、この病院じゃ、これが普通なのかもしれない…。いや、そんなわけあるか。
「だいたいきみぃ、保護者はどうしたんだい??」
保護者…かぁ…。
お母さん、今はどこで何をしているのかな。僕を捨てた、お母さん。
「天国か、地獄。それか、あの世って言えばいいかな?」
僕を捨てて、自殺を図ったお母さん。何のために死んだのだろう。
看護婦とドクターは、気まずそうに目線を落とした。
うつむいていて、判らないけれど、「聞いてはならないことを聞いてしまった!」という表情をしているのであろう。
「さようなら」
そう言い捨てて、病室の窓から外へ飛び降りた。
さて、鏡を探して、早く鏡の国へ戻らないと。
「鏡、鏡…」
自分の持ち物に鏡は無かったけど、短剣が有った。銀色の刃には、自分の顔が写る。これでも、鏡の国には戻れるだろう。
自分の指に切り傷を入れて——————