複雑・ファジー小説
- Re: 鏡の国の君を捜して…… ( No.42 )
- 日時: 2012/05/14 22:36
- 名前: クリスタル (ID: rWLc9jDy)
「ぎぎゃびょにわ!」
自分でも良く分からない叫び声を出してしまった。
何とか、鏡の国のゲートにたどり着いた。
鏡の国の住人の血と、自分の姿が映せるもの——ソレだけがあれば、僕らは鏡の国ゲートとフランスを行き来できる。昔と比べれば便利になった。
昔は…パスポートとか、身分証明書とか、鏡の国王の承認、王様への貢物、(育毛剤等)が必要だった。
それに、門番はマッドハッターだった。
「ようこそ? おかえり? ……おはよう? チェシャ猫……」
ゲートの番人の声がする。ただ、どこにいるのか? 姿は見えない。
また寝起きなのか、あいさつが適当だ。
「ヤマネ、どこに居る? 出てきなよ」
「私は…こんな所で死にたくなんかない……」
このゲートの番人は、ヤマネという名前の眠り鼠。昔は、最強といわれていたが、牙を抜かれたあいつは、老害と呼ぶにふさわしい。
「僕は、鼠よりもウサギを喰らいたいんだ。シロウサギはどこにいるかわかる?」
「……マッドハッターの……「近く」……」
あいつらを殺す前に、アリスに会いに行った方がいいだろうか?
空は、夕日が赤く燃えている。夜だと、マッドハッターのペットが徘徊し始めるから、今しかない。
帽子屋の小屋が見えてきた。ゲートと帽子屋の小屋は、結構近い。
茂みからそっと覗くと、なななんと! ノエルとレイシーが優雅にお茶飲んでいる…!
参加したいという衝動を押さえ込んで、シャキンッと、短剣よ構える。
「………………………………………」
いいなぁ。お茶会、いいなぁ。いーいーなー。なんて、楽しそうなお茶会の容姿を眺めていたら、誤って自分の手に短剣を刺してしまった。
痛い!
と、とりあえず、あの腐りかけの大木を切り倒そう。あれを切り倒せば、帽子屋の小屋の入り口をふさげるし、上手くいけば、二人をつぶせる。
「ノエルー。お昼頃にお茶会始めたけど、今は何時?」
「6時頃ですかね。スイマセン、僕は時計持ってないので…あ、小屋に戻りますかぁ?」
そういって、ボクはお茶セットを持って小屋の扉に手をかけた。
「そうだね。もう、戻ろうー」
…メキメキ…メキ…
腐った木が倒れる直前の音がする。どこから…?
「!!」
『ゲートの大木』だ! ボクらに向かって倒れてきている…!
ばっとお茶セットを投げ出して、レイシーを突き飛ばして……。
ズォォオオオンッ
真後ろで、大木の倒れる音が響く。小屋の入り口が塞がれた。
この腐りかけの大木は昔、ボクらがゲートの門番だった時の…今はもう使えないけど、「思い出の品だったのになぁ…」
しかも、腐り落ちたのではなく、誰かに切り倒されたようだ。
ゲートの大木のすぐ横に、それは潜んでいた。
「…こんばんは。チェシャ猫さん。こんな所で会うなんて、奇遇ですね」
「馬鹿か、お前。僕は君たちを殺しに着たんだよ?」