複雑・ファジー小説

Re: 鏡の国の君を捜して…… ( No.52 )
日時: 2012/05/10 20:22
名前: クリスタル (ID: 3Em.n4Yo)

 ボクとチェシャ猫はにらみ合った。先に行動したのは僕だった。

「チェシャネコさん、ねずみがいますよ!」

 彼(彼女でも可)の背後を指差して叫んだ。まさか、こんな引っ掛けに掛かるわけが……あれ?

「ねずみ? どこ? 晩酌が終わってから殺してあげるから待ってて」

 ボクとしては目の前の出来事を認めたくは無かった。とりあえず、ボクはバッと走り出した。

 それにしても身の回りに馬鹿が多い。でも、彼(彼女でも可)の場合は飢えていただけかも知れない。猫は、大体いつも飢えているイメージがあるから。

 逃げ出して、3秒。目の前の大木がボクに向かって倒れてくる。ギリギリ足を挟みかけた。まあ、抜けたけれど。

 木が倒れてくるという事は、とうに追いつかれて、抜かれて、さらに彼女(彼でも可)は3秒以内に森林伐採を行ったという事だ。そう考えると、彼女(オカマでも可)が本気でボクを殺そうとするならば、1秒も掛からず瞬殺可能なわけだ。

「生きて帰れる希望がなくなったなぁ」

「そうそう。生きて帰れると思わないでね。君が晩酌で、クソウサギがデザートで、レイシーが、寝る前の1杯」

 晩酌よりデザートが多めだ。まあ、逆にデザートさんがチェシャ猫をデザートにしてしまいそうだけど。晩酌に逆転のチャンスはなさそうだ。

 さて、できっと師匠達がボクを助けに着てくれるだろうから、ここで命乞いでもして時間稼ぎ。

「どうか命だけは、助けてください」ぺコッ(45度)

 チェシャ猫は、僕をにらみつける。その視線だけで殺されそう。

「…つまらない。君、過去に何人も殺しているくせに。殺しあおうとは思わないの?」

「殺しはあの時限りですし、かなわない相手に立ち向かったりなんてしませんよ」

 シマウマだって、ライオンからは必死で逃げる。立ち向かうのなんてそれなりの力がある極一部の動物だけだ。ボクなんて、ライオンに対する子馬ぐらいなモンだ。

 と、言ったつもりは無かったけど、声になって彼女(オカマ)の耳に届いていたらしい。

「君は自分を子馬と思い込んでいるだけの馬鹿なハイエ」「うらああぁぁぁぁぁぁ!」

 共食いするライオン達の登場。「肉がなければ、仲間を食べればいいじゃない。仲間なんて、形だけなんだし」と、思っているに違いない。

「じゃあ、ハイエナ。次に会うときは、遊ぼうね」

 そういえばライオンは、実は臆病な生物だったなぁ。