複雑・ファジー小説
- Re: 鏡の国の君を捜して…… ( No.71 )
- 日時: 2012/07/15 19:06
- 名前: クリスタル (ID: YOt4GnQH)
「…落ちてないからな!」
「はいはい。分かりました。タオルどうぞ」
ノエルの気遣いが、いろいろな意味で心に刺さったであろう、キルさん。
実は、ノエルは全く調理が出来なくて、キルさんが調理担当らしい。
3分クッキングを超えた1分クッキングで、キルさんは……え、何を、作ったのだろう。
青紫色の…ああ、どう表現すればいいのだろう。とりあえず、味は保障できないだろうな。
「………………………………………」
「なんだ、レイシーもとい、居候。お前にこれは食わせないぞ」
うん。私は食べられない物質だろうね。あと、あなた以外の3人は居候だと思うけど。
「居候はこれでも食え」
「え、……あ、り、がと…う」
今度は、赤紫色の物質だった。これを食べ物だと呼べるのか。
とりあえずひと口…食べる勇気がない。「あら、レイシー。このキルが他人に餌付けしているのよ? こんなに珍しいことは無いわ。さあ、もっと豪快に! お食べ!」
エリーゼさんが私の頭を押さえつけ、赤紫色の物質を、私の口に流し込んできた。
「あぼぼぼぼぼっっ」
「きゃははは。さあ、喰えっ」
「あぼぼ…オロロロロロロ〜」吐いた。
「全く。人が作った物を吐くとは」
「スイマセン。今度からは食べれるものを作ってください」
あの味と食感は、砂糖と塩と牛乳と納豆とゆずを混ぜ合わせれば表せると思うから、挑戦してみてね! 割合的には、1:1:2:2:1。
キルさんしか料理作れなくて、キルさんは、普通にあれを食べていて…。
「……まさか、いつもあの料理で生きているの!?」
ギョッとしながら、聞いてみたが、ノエルが笑いながら「ハハハ。そんなわけ無いじゃないですか」
「そうだ。あんなもので生活していたら、老い先永くないだろう」
作った本人も、鼻で笑いながらそんな発言をした。
「まあ、そんなこと置いといて、真面目な話をするが……。レイシーは、これからどうするつもりだ?」
「進路相談!?」
「…フランスに帰るんだろう?」
「え?」
ちょっと…いや、いろいろおかしい。私は、無理やりエリーゼさんに連れてこられたのに、特に何もなしに「帰れ」と、言われてる。
「私、エリーゼさんに無理やり連れてこられたんですけど? 何も無いって、おかしいですよね?」
「ああ、そうか」
キルさんは、無表情で呟くように言う。
そして、沈黙。だ、誰か何とかして!
エリーゼさんもノエルも小屋の端っこで、仲良く「E,T〜」なんて言いながら、人差し指の先と先を付け合って遊んでいる。
自力で沈黙を破る「よ、用が無いなら、帰りますけど」でも、用がないはずがない
「ああ、無いわけではないが」ほぅら。