複雑・ファジー小説
- Re: 鏡の国の君を捜して…… ( No.8 )
- 日時: 2012/07/20 12:23
- 名前: クリスタル (ID: YOt4GnQH)
それでも、一応植え込みの中を確認した。わぁ、虫がいっぱい…。おや、あれはお家の居候、ゴキブリさん。
思ったよりたくさんの虫がいて、見ていて飽きない。むしろ楽しくて、暫く眺めた。虫は結構好きだ。
でも、他人のお家の植え込みを観察する私は、かなり怪しい。泥棒に見えるかもしれない。
諦めたら負けた気がする。でも、周りに怪しく見られたくない。そんなことを思っていると、丁度良く雨が降ってきた。
これで、諦めたのではなく、帰ったのだと思われる。はず。
まあ、周りには誰もいないから、関係ないけど。誰もいなくても言い訳を考えちゃうのは癖かな。
降り始めの雨は、土の匂いがする。それは、あまり好きじゃない。むしろ嫌い。どうして嫌いなのかは忘れたけど、どうしても好きになれそうも無い匂い。
思い出せない、何かに似ているから・・・。ま、嫌いな事に理由はない。嫌いな物は嫌いだ。そのことに偽りはない。
家に帰ろうと歩き始め、気が付く。本を適当なところにおいてきてしまった。どこにおいてきたのだろう。本が塗れると大変なので、家まで急いだ。
私の家の庭は、そこそこ広い。大体、テニスコート二つ分くらい。芝生で覆われている。花でも植えればいいのに、一面の芝生だから、殺風景だ。まあ、シンプル・イズ・ベストと言われるものだ。
庭の中央には、白いガーデンテーブルが有る。
「パラソルが有れば、本も濡れなかったのに…」
本来パラソルが着いているのだけど、1年ほど前、パラソルを使ってファッションショーの真似をしたら、大破したのだ。
ふぅ、とため息をつくと、雨はさっきまでおとなしかったくせに、突然土砂降りになったので、急いで玄関の前へ。
玄関のドアを引いたが、開かない。あ、押すのか。開かない。
3分間ほど、押したり引いたり、謎の舞いを舞ってみたり、ドアノブをガチャガチャ慣らしてみていたが、よく見ると、鍵が閉まっていた。
鍵は、ポケットの中に入っていた。ああ、自分で鍵閉めたのか。
もう、色々上手くいかない。
ウサギに蹴られるわ、本濡れるわ、鍵が開かないからって、謎の舞を舞って、近所のおばさんに凝視されるわ。
何もかもいやになった。家に入って、どたどたと階段を駆け上がり、すぐに自分の部屋に引きこもった。
引きこもっていても、母親は仕事に行っているし、二人暮らしだから誰も心配してくれない。誰か心配しろよ。うとうと…。
きっとこれは夢だ。部屋に引きこもって、そのまま寝てしまったんだ、多分。
そこは、何処かの王宮。美しいシャンデリアが幾つも、天井からぶら下がっている。廊下は、赤い絨毯がどこまでも続いていた。
とある部屋に入ると、綺麗なフランス人形がずらっと並ぶ子供部屋。軽く100を超えるだろうけど、ここまでフランス人形だらけだと、不気味にも思える。
窓から見える景色は、一切現実味が無い。緑や黄緑のクレヨンで画用紙を塗りつぶしたような風景が広がっている。
…最近、同じ夢を何度も見る。この夢で、7回目。最後に、見覚えの無い顔の整った男が出てきて、上手く聞き取れないけど、何か呟いて消えていく。
今回も、いつもと変わらない夢。の、筈だった。
今回は、いつもと違った。
突然鋭いものが私に向かって飛んでくる。男は、私をかばって刃物に貫かれる。赤い滴が宙を舞う……———————————————
ガバっと、ベッドから跳ね起きた。