複雑・ファジー小説

Re: チイサナセカイに飽きたなら。【再発!!】← ( No.2 )
日時: 2012/02/12 21:30
名前: ひゅるり   ◆SDhkkrnOxE (ID: YKdGlOy5)
参照: メル友の欲しい今日この頃←




第0話   単なる終章。







彼女は豪華な部屋の窓から空を見上げた。
深夜なのに明るい空。太陽や星、月までもが光り輝いてその様子は、


「…綺麗すぎ、です。」


彼女はまるでまぶしいとでも言うように眼を細めしゃっ、という小さな音を立てながらカーテンを閉めた。
隙間から入る光はとても明るかった。
彼女は広すぎる寝室を振り返って見渡した。
本棚にベッド、小さな机。
一つ一つ見ると細かい細工がされ眼を奪われる様だった。
彼女はその部屋の持ち主とは思い難いほどシンプルな服装をしていた。
まるで王の部屋に平民が入り込んだかのようにその光景は異質だった。
ぽす、と椅子に腰掛ける。俯くと長い赤毛が視界に罹った。それを耳許に掛けたときにふと気付いた。
先程までカーテンの隙間からはまぶしいほどの光が漏れていた。
今はその光が無い。カーテンに視線を向けると此方を覗き込む2つの瞳。
思わず悲鳴を上げそうになったのをぐっとこらえてカーテンを開ける。
其処に居たのは同じ年頃の容姿の青年。
雑な装飾の鎧にぼろぼろのマント。
腰元にはそれには不似合の細身の剣に手に握られているのは短剣。
短めの茶髪は所々が跳ね、肌は所々が泥か何かで汚れている。

窓越しに見詰める彼の姿は、滑稽、と称すのがふさわしいだろう。
彼が窓を割ってまで入ろうとする様子なので彼女はきぃ、と小さな音を立てて窓を押し開けた。
口角を上げ緩い笑みを浮かべながら彼女はこう告げた。


「御初にお目にかかります。
  貴方様の御噂は沢山存じております。素晴らしい物ですよね。
  部下が消えていくたびにわくわくとしておりました。」


肩を上下させ荒い息を立てる彼の呼吸音がだんだんと静かになっている。
彼女は再び笑みを浮かべた。凍てつくような笑みを。


「…初めまして、と申した方がいいかしら?
  勇者様?」