複雑・ファジー小説
- Re: 【再発!!←】チイサナセカイに飽きたなら。【コメ求めます。】 ( No.6 )
- 日時: 2012/02/20 01:26
- 名前: ひゅるり ◆SDhkkrnOxE (ID: 2Ujo/OfH)
- 参照: メル友どころかリア友ともテストが忙しくて交流がry
第1話 前も後ろもないのに。
「探したぞ、魔王。」
「私を倒すために貴重な人生の時間を遣ったのですか?
嬉しいのですが、人間の寿命とは短いと聞きます。愚かです事。」
ふふ、と【魔王】と呼ばれた彼女は緩い笑みを浮かべる。
ぽすり、と体の大きさには合わない大きなソファに背を預ける様に腰掛けると手元にあった小さな鈴を手に取った。
ちりちりと小さくも心地よい音が部屋に響く。
「ねえ、勇者様。
この鈴、人間界の物をまねて作らせたんですよ。いい音色だと思いませんか?
ほら、私容姿だけは人間に似せることができるでしょう?
お忍びで幾度か行かせてもらったのですよ。」
ちりちりと魔王は鈴を鳴らし続ける。こらえかねた様に【勇者】と呼ばれた彼は腰元の剣に手を伸ばした。
「それで私を殺すおつもりで?
随分御立派なものですが、私の見る限り貴方の物とは思いにくいのです。」
「こ、これは旅の途中であった仲間からもらったもので…」
「ではそのお仲間は?何故ここに居らっしゃらないのです?
逃げ出したのですか?もしくは途中で死んでしまった…、とか?」
魔王は笑みを崩さない。
頬杖を突きながらぷらぷらとひざ下を揺らす。
ちりちりとした鈴の音が部屋には続いていた。
「ああそうさ死んだんだよ。
御前の手下の将軍に殺された。御前のせいだ!!」
「…グオルグではありませんか。エラフィンの都市より先の砦に居た。
虎の姿に蝙蝠のような羽をもった者です。」
「……確かに、そうだ。」
「…彼は、確かに私の手下でした。それも一番私に忠実で居てくれた。」
魔王はぽつぽつと昔の思い出を語るように呟く。穏やかな表情だった。
ふと手元の鈴を大事そうに小さな箱にしまう。
「それが何なんだよ。
あいつはそのグオルグに殺されたんだ!
御前に殺されたも同じことなんだよ!!」
「…、そうですか。分かりました。
では勇者様、貴方はそのご友人の敵を取るおつもりで?」
「ああ。もちろんだ。それが俺にできるあいつへの恩返しだからな。」
「貴方は何故旅に出たのです?
考えてみれば凄いお話ではありませんか。
ただの人間が魔界の王を殺すために旅に出るなど。」
「村のみんなが困ってたからだ。魔王のせいで。
世界中の人間のために旅に出たんだよ。」
魔王の口角がくい、と上がった。
長くて細い首を準備運動をするかのようにかくかくと左右に押し倒す。
「勇者様にはご自分のご意志は御有りで?
私にはあなたのおっしゃることはとてもまともに聞こえますが、それと同時に操り人形の生き様にしか聞こえないのですよ。」
「でも、だってそれは…っ!」
「それに、責任は私に擦り付けですか?まるで子供の様。
『だって』と『でも』は一人前ですね。」
にこりと柔らかく笑む彼女に向かって勇者は刃を振り上げた。