複雑・ファジー小説
- Re: 【再発!!←】チイサナセカイに飽きたなら。【コメ求めます。】 ( No.8 )
- 日時: 2012/02/22 07:17
- 名前: ひゅるり ◆SDhkkrnOxE (ID: 2Ujo/OfH)
- 参照: 今日テストん!いい事と言えば午前中で終わるというだけだ!!!←
第2話 すべての悲劇の始まりの赤い果実。
ぐさり、と鋭い剣の切っ先が肉を引き裂いた。
濁った黄色の体液や緑色や赤紫色の肉片が飛び散り………消えた。
勇者も魔王も眼を見開いている。
まるでそこだ時間の流れが変わったかのように。指先まで固まった様に動いていない。
振り上げた刃物は魔王の額向かって振り下ろされた。
魔王は緩い笑みを浮かべているだけだった。
勇者も口許を歪ませて笑んでいた。
その時、一匹の小さい魔物が勇者と魔王の間に入り込んだのである。
肉片や体液は広く飛び散るも消えた。雪が溶けていくように、霧が晴れていくように。
「…今のなんだよ、」
「魔物です。私たちの世界では魔力が第一です。魔力が無ければ存在する意味もない。
今消えた魔物は死んでしまったことで魔力を使い果たしてしまったんでしょう。
だから、消えたんです。」
魔王はそっと目を伏せる。
暫くして視線を上げると勇者の拳は震えていた。
此方を睨み付けている。
魔王は一瞬、一瞬だけ悲しむような表情を見せた。
「…御前は、」
「…?何でしょう。」
「御前は自分のために誰かが死んでも平気なのかよ。」
誰に聞かせようとしているわけでもなさそうにぽつぽつと言葉を紡ぐ。
魔王は数回ゆっくりと瞬きをした。
「…、平気に見えますか。」
「え、」
次は魔王がぐ、と拳を握りしめた。
唇を噛むように、何かをこらえる様に下を向いている。
勇者の顔には困惑の色が浮かんでいた。
「帰ってください。
嫌なら魔法で引きずり落としますよ。
私を殺すならその前にしてください。抵抗はしません。
だからもうこの城に近寄らないでください。
他の魔物も、勇者さん、貴方も。ほかの人間の方も。」
ひときわ大きな声で、しかし冷静で静かに威厳をもった声が、鈴の音よりも大きく響く。
勇者に向けられた視線は何かを訴える様に藍から赤に変わっていた。
その声と同時に、2人分の足音が近づいてくる。