複雑・ファジー小説
- Re: Dream Revival —再生の協奏曲— ( No.6 )
- 日時: 2012/02/25 21:38
- 名前: 夏樹 りん ◆IP0D6MCWdg (ID: mP9fdSv/)
堂々とたたずむ樹の隣に白那と黒希は居た。二人とも、空にできた裂け目を見ていた。悲しげな顔つきで。
「お別れの時がきたのかしら?」
「え?」
突如、白那が呟いた。その呟きはしっかりと黒希の耳に届いた。
「お別れって、どういうことだよ?」
「そのまんまよ」
意味が解らない黒希に白那はこう告げた。
「黒希にはまだ解らないんだね、私たちのことが。私たちの存在理由が。私たちには、”期限”があるの。その期限が、私にある期限が今日だったの。だから、私は、”私”に還らなくちゃいけないの」
その時、白那と誰かが重なったように見えた。白い髪に、青い目。——覚えがあるはずなのに、解らない。
「今、私は誰かと重なって見えるでしょう?」
白那の声と誰かの声が重なる。——やっぱり、覚えがあるはずなのに解らない。一体なんなんだよ! このモヤモヤは!
「大丈夫、私は消えないから。ただ、”私”に還らない限りずっと——世界を彷徨うの。永遠に」
白那の声が小さくなり、誰かの声が大きくなっていった。それと同時に、白那が透けて見え、誰かがハッキリ見えるようになってきた。
「お願い、シュヴァルツ。来衣に伝えて、貴女の期限は近いって」
「シュヴァルツって誰だよ! 答えてくれよ! ヴァイス! ってえ?」
「だんだん、思い出してきてるでしょ? ”私”を——」
白那は見えなくなり、声も聞こえなくなり代わりに見えたのは、白き少女——ヴァイス。覚えてないのに、解らないのに何故だか、懐かしい。そんな感情が、気持ちが黒希の心が駆け巡った。
「どうしてだ? 何かが掴めそうな気がするのに……」
「きっと、いつか解るから、その時まで、さようならかしら?」
「白那!!」
白き少女ではなく、白那が見えた。
「今までのは、私が見せた黒希に近い誰かの記憶にある、私の姿。私であって”私”でないのよ」
「意味が……よくわからないんだが」
「来衣に聞いてみなさい。——彼女はアウラにそっくりだもの」
また、白那ではなく白き少女になった。
「アウラ?」
「白那じゃない”私”の、友人なの」
「なんか、頭が……」
「フフフ、それじゃあ、私はもう還らないと。”私”が待っている」
今度は白那の姿に。白那は悲しそうな笑顔を作り最後に告げた。
「来衣を、守ってあげてね」
一言残すと光に包まれ消えた白那。残ったのは小さな光。今にも消えてしまいそうな儚い光。
「白那……」
一筋の涙を流し、力なく呟いた。
来衣
「白那?」
走る足を止め、振り返った。白那の声がしたはずなのに、誰も居ない。来衣は再び走り出した。
夜空には小さな光が一つ、消えた。