複雑・ファジー小説
- Re: Dream Revival —再生の協奏曲— ( No.7 )
- 日時: 2012/03/26 19:13
- 名前: 夏樹 りん ◆IP0D6MCWdg (ID: mP9fdSv/)
「どうやら、光に愛された少女の人形は無事、還ったようだね」
「これで、動く……壊されかけた、光の歯車が、きっと……」
「光の歯車、闇の歯車、狭間の歯車、すべてが揃う、もうすぐに」
「闇の少年の人形は一体何時になったら戻るのですか?」
白き部屋にて、4人の少女達が会話をしていた。紺色のコートを羽織った黒い髪の少女、白いワンピースに黒のコートを羽織った茶色い髪の少女、紅いドレスを着た紅き髪の少女、桜色の着物を着た黒い髪の少女。皆、退屈そうだ。紺色のコートを羽織っている少女は言った。
「光に愛された少女の件だけど……一回記憶を封じなければならいかもしれないね。……彼女にとって、”彼”が居ないのは」
少女が続きを言おうとすると、茶色い髪の少女が遮る。
「悲痛……」
「ユラ……頼むから遮らないでくれないかな?」
「ごめんなさい、リートゥス。でも、感じたから。彼女の、心の悲しみが、痛いほど……」
茶色い髪の少女、ユラは悲しそうに言う。それをみたリートゥスは黙り、俯く。それを見た紅き髪の少女は不機嫌そうに言う。
「頼むから暗くならないでくれ。暗いとこっちまで暗くなる」
「ランリ……」
紅き髪の少女、ランリは顔をしかめていた。暗い雰囲気はこっちまで暗くなるからやめて欲しい、これは周りが暗くなると必ず言う台詞。
「ともかく、光に愛された少女の記憶を封じるのは、危険なのでは?」
着物を着ている少女は心配気味に問う。
「桜子の意見はもっとだ。しかし、光が闇になってしまったら色々大変だろう? 今の世界のようじゃ」
「確かに、”古の双子”のうちの妹の方は……偽者であり、滅んだ世界の生き残りだったもんな。世界の理が乱れているのに、バランスが崩れているのに……」
リートゥスとランリは考え込む。滅んだ世界、神の意思で滅んだ世界の生き残りは、滅んだ世界の力を吸い込んでしまっている。普通ならどうでもいい話なんだが、滅んだ世界が普通ではなかったから大問題となっている。古の双子は世界を再生することが出来る。もちろん相当な力を使う。しかし、偽者はその力が無い。その代わりに別の力がある。それが滅んだ世界の力を吸い込んだときに生まれた力、——記憶を操る力。
「記憶を繋ぐ鎖が、錆び付いてしまって、バラバラになってしまった。世界の記憶の鎖さえもが……偽者によって。そのせいで、世界のバランスが、存在する力さえもが、無くなりつつある。今、理想郷<ユートピア>が存在できるのは、本物の彼女のおかげ」
「しかし、理想郷<ユートピア>にも限界があった。だから、あの世界の地球<ジ・アース>を……闇に引きずりこんでいるんだろう?」
無言で全員頷く。世界達を救うには、地球<ジ・アース>の犠牲が必要なのだ。世界の再生が終われば、地球<ジ・アース>もまた救われる。
「今は、そうするしかないんだ……」
リートゥスが呟いた言葉に、この場にいた全員が共感した。
「ハァハァハァ」
もう少しで、白那と黒希に会えそうな気がする。来衣はひたすら走り続けた。
——もうすぐ、彼女の運命を大きく左右する冒険の序曲が始まる……