複雑・ファジー小説

Re: また明日. ( No.22 )
日時: 2012/03/08 22:04
名前: coco*. (ID: /u41yojS)

第十九話【先輩の言葉】



「遥ちゃんて、あんなコだったんだぁ……ふふっ」

彼女の両親は、彼女には「早く帰ってこい」と言ったクセに自分達は仕事。
彼女は一人料理をしながら、独り言をつぶやいた。

何より、遥と仲良くなれたこと。
遥が、先輩の所に言って報告してくれること。

(よかったぁ)

でも、明後日には、この町を離れるんだ。
そんなの、今更。

安心したとたん、次の不安が彼女の真ん中に押し寄せてきた。

一人の晩ご飯を済ませ、彼女は自分の部屋を片付け始めた。
一回集中すると、他のものにはとらわれない彼女だけあって、片付けは案外、早く終わってしまった。
あとは、ダンボールにうつすだけになった。

**


とうとう、今日だ。

「……」
「旭いいいいー!」
「あっ、遥ちゃん!」
「とうとう、今日だねぇ。寂しいな〜っ」

ふふっと二人、笑いあった。
今日は、彼女がこの町を離れる日。

両親が車にありったけの荷物を詰め込む。

突然、遥ははっと何かを思い出したかのように手をたたいた。

「あ、そうだ。陽斗から、伝言があるよ」

にやにやしながら、遥は手を口にあてる。

「え? 伝言?! そんなのあるの?!」
「うん。なんかね、……」

遥は、彼女の耳元に口を近づけた。
彼女は遥の行動がすぐに分かり、耳を、遥の口元に近づけた。

「……っ!」
「あはは、真っ赤だよお」

彼女は思わずその場で泣きそうになった。
先輩の言葉が、嬉しすぎて。

「じゃあね、遥ちゃん!!」
「旭、ばいばい」
「また、会おうね」
「うん、絶対だよ!!」

遥も彼女も、最終的には泣いてしまったが、笑顔だった。

頭の中で、先輩の言葉を、何回も繰り返した。

『えっとね、……



「俺の事は、全部忘れていいから。違う学校でもいつもの通りの旭でいけよ」

って、言ってたよ!」


何故、忘れていいのかよく分からなかったけど、彼女の目には、涙があふれそうになったのは確かだ。


だから、笑顔を失わずに、絶対にいつもの通りの自分で行こう、と彼女は心に決めた。



——