複雑・ファジー小説

Re: また明日. ( No.26 )
日時: 2012/03/13 21:24
名前: coco*. (ID: /u41yojS)

第二十二話【森の気持ち】

静かに教室の扉を開くと、森がふてくされた様子でこちらを見ている。

「もーう、どこ行ってたのよぅ。暇だったじゃんっ!」
「……ごめん」
「もうさ、アスカ、いたからさ。良かったけどさ。いつもより静かだったよう」
「……うん」

さっきから、テンションだだ下がりの俺を察してか、森はいつもより自分のテンションを上げて話してくれた。

「あ、そうだ。今日、久々にだけど、ノートうつしたぁ! 貸してあげる。日向うつしなよ。旭ちゃんも」
「……あっ! はい、ありがとうございます」
「いいのいいのぉ」

あはは、と森は笑う。
旭がちょうど前を向いたくらいに、俺の腕を容赦なくつかんだ。

「どうしたぁ〜、日向! うちは気づいてるよ。日向、旭ちゃんとなんかあったろ?」
「……別になんも」
「嘘だっ! 日向と何年友達やってると思ってんの? ……あ、半年くらいか」

頭をかく、森。

途端に「あっ」と声をもらす。

「も、しかして……こ、告った、とか?」
「……!」

ビンゴ。

**

次の授業も、また俺はサボった。
誰とかって? もちろん、森と。
こんなんで勉強やっていけるのかって? 大丈夫。(多分)

また屋上へ。

こうして、男子と女子の恋バナの始まり始まり。

「ねぇ、いつから旭ちゃんの事好きだったの?」

上目遣いで森は聞く。
なんでかな。森にならなんでも話せるような気がした。

「んー……中学の頃からかな」
「話した事あったの?」
「ううん、仲良くはなかった。ただ、顔見知りなだけで……」
「ふーん?」

ニヤニヤしている森の顔。言いたいことがすぐに分かった。
"じゃあ名前覚えてくれてたのって奇跡じゃない?"
違う。最初から、旭はそういう人だから。
だから、奇跡なんかじゃない。

「そ、そういうお前は好きなヤツとか……いんのかよ」
「え?! え、と……!」
「ん? どうなんだよ〜」
「い、いるけど……期待は、もうしないのっ!」
「……へえ?」

よく、意味が分からなかったけど、その後森は真っ赤な顔で、
「授業が終わるから」と俺の手を引っ張っていった。

**

その後の授業もほとんど寝ていて、その日はなんだか学校に行った気がしなかった。

放課後になり、俺は先生に呼ばれた。
——やっぱ、二授業もサボるのはダメだったか。

「じゃ、とりあえず行ってくるか」
「行ってらっしゃ〜い!」

説教されると聞いた森は、最高級の笑顔で俺を見送ってくれた。
ん? 今日は友達と帰らないのか?
まぁ、いいや。

「全くお前は!! 今日の授業は——」

先生(ハゲ)の説教は結構長々と続き、俺は説教の半分以上は
あいづちを打ちながらもほとんど聞いていなかった気がする。

やっと「分かったか!!」となり、「すいませんでした」と心にもないことを一言。

職員室のドアを静かに閉める。

「はぁ……」

ため息をつきながら、荷物を取りに教室へ。
教室の近くへ行くと、女子の怒鳴り声が聞こえる。
え……?

もっと近づいてみると、怒鳴り声の主はすぐに分かった。
森だった。

「なんで、あの人の気持ちわかんないの?!」

しかも、怒鳴っている目線には、旭がいる。
旭は、困り顔で涙を浮かべている。

「……ずっと、友達にお似合いだって言われてたの、日向と」

……?
お、俺……?

「うちも、友達に言われてるうちに、好きになっていったの。両思いかもって。仲良しかもって」

……は?
何言ってんだ?

「けど、違った。うちじゃなかった……旭ちゃんが転校してきてから、誰も友達でお似合いって言う人はいなくなった」
「……あ、の森さん……」

控えめに旭は森の肩に手をかける。
振り払おうともせずに、森は旭から顔をそむけた。

「……だから、好きになるなら今のうちだよ、旭ちゃん。それとも、陽斗さんしか愛せない?」

よく言ってる事が分からない森。
よく見れば、森の目からはもう大粒の涙が出ている。

二秒、辺りがしらけて旭は怒ったような目つきで、森を睨んだ。

「わた、私の気持ちは絶対、変わりません……!」
「……そっか」

森の声は震えていた。
話の内容は、最後までよく分からなかった。

「怒鳴ったりして、ゴメンナサイ」

森は、素直に頭を下げた。

「いえ、こちらこそ変な態度とってごめんなさい」

旭も丁重に頭を下げた。

「じゃ、かえろう」
「はい」

そのまま二人は、俺の存在に気づかずに廊下を歩いていった。



あ、まじで。
森の気持ちに気づいたことは森には絶対ヒミツだかんな。


——

作者*

よく分からなくなりました!
すいませんでした!

喧嘩の内容はあらかた決まっていたのですが、
なんか変になりました!

すいませんm(_ _)m