複雑・ファジー小説

Re: また明日. ( No.6 )
日時: 2012/02/25 22:00
名前: coco*. (ID: /u41yojS)

第五話『happy birthbay』


キーンコーン……。

放課後になる。
バタバタと、廊下から足音が聞こえる。

俺も、カバンを持って席を立つ。
森は、もう女友達とぎゃーぎゃー騒ぎながら帰っていった。

「……あれ、飯室帰んないの?」
「あ、あたしはもう少し教室にいます」

控えめに飯室が答えた。
こんな時間に何をするんだろう。

「そう、じゃあまたな」
「あ、……はい。今日は一日楽しかったです、ありがとうございます」
「あー、いやいや。森に言ったらそれ泣いて喜ぶよ、あいつ」

二人で微笑み合う。

「またな」と言えるのが、なんだかとても嬉しくなった。
また、会っていいんだ。そう解釈できる気がして。実際そうなんだけど。

玄関で靴を履き替えて、外に一歩。

「……ああああ!」

やっべー、数学のノート忘れてきた! もうすぐテストじゃねえか!
面倒くさいけど、教室取りに行くか……。

俺はダッシュで教室に戻った。

……あれ、そういえば飯室まだ教室にいるのかな……?

教室に入ろうと瞬間俺は耳を疑った。

飯室……?

窓際の席で、外を眺めながらバースデーソングを歌っていた。

「happy birthbay...to you..」

その歌声が、あまりにも綺麗で、あまりにも真っ直ぐだったから——。
俺はその場から離れられなくなった。

飯室を歌い終わった所で、俺はわれに返った。
ノートの事なんてすっかり忘れて俺は飯室に話しかけようとした瞬間、

「いいむ」
「陽斗……——」

見てしまった。
「陽斗」とつぶやきながら、飯室が涙を流している所を。