複雑・ファジー小説

Re: また明日. ( No.9 )
日時: 2012/02/26 21:02
名前: coco*. (ID: /u41yojS)

第七話【名前】


男子が恋するのっておかしい?
普通は、女が一生懸命するもの?

そんなの、誰が決めたんだよ。

別に、勇気を出すつもりもないんだけど。
どうせ叶わない。報われない。

陽斗[ハルト]っていう人が、飯室の心の中にはいるんだ。

俺には分からない、離れていた時期の二年間の中に、——。
まだ飯室の事、俺……なんも知らない。



「おはよー! 旭ちゃん!」
「おはようございます」

丁寧に頭を下げて飯室は挨拶をする。
どうやら昨日の放課後の事はバレてないみたいだ。

「おはよ……飯室」
「おはようございます」

同じ反応か。

まぁいいや。

「飯室ー苗字面倒くさいから、名前で呼んでい? 森みたいにさ」
「え」
「はっ? じゃあ、あたしの事も名前で呼んで!」
「え、面倒くさ」
「は?!」

むきになって、森が俺の顔を見上げて、俺の顔を森の顔が思いっきり近くなった。

「……っ」
「ぎゃああああ! 変態日向に襲われるううう!」
「あ?! 誰がお前なんか襲うか!」

あああ、さっきから飯室が困ってる。
それに気づいてない森も、ヤバイ。

「おい、飯室——」
「……っえ」

顔を上げた飯室の顔は、真っ赤だった。
俺は思わず目を見開く。

「ご、ごめんなさい、こっち見ないでください!!」

そっぽ向く、飯室。
ぽかんと俺は口を開けていた。

な、な……?

「お、男の子に名前で呼ばれるなんて初めてなので」

と、付けくわえた。

と、いう事は、呼んでいいって事、か?
暴れる森を片手で押さえつけ、俺はぼーっとしていた。

名前か……。

旭って、呼んでいいのか……。

「じゃ、あたしの事も藍子って」
「遠慮しとく。森って呼んだほうが呼びやすいし」

そう、真顔で言ったつもりが、顔は自分でも微笑んでいるのが分かった。
森は悔しそうに"旭"の方を見た。

「あ、あたしも森さんで」
「……うわーーっ! 旭ちゃあああん!」

旭は思い切り苦笑い。
俺も、ひきつった笑顔で席についた。

旭も、横顔がなぜか、微笑んでいるように見えたのは、俺の勘違いかな。