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複雑・ファジー小説
- Re: 言霊〜短編集〜( ( No.16 )
- 日時: 2012/02/25 11:37
- 名前: 結城柵 ◆ewkY4YXY66 (ID: khvYzXY.)
【真夏の雪】
意識が、夢と現実を行ったり来たり。正直、今いるのが現実か夢かもわかっていない。
今は真夏。真夏だ。しかしこの俺が今まさにホットな人間だろう。高熱なうだ。
熱いし、苦しいし、痛いし、気持ち悪いし。
だけど、なにもできない自分にひたすらに気分は沈んでいく。
「大丈夫?」
澄んだ女の子の声。あぁ、ついに幻聴まで。そう思うと、ひやりと額に冷たい感覚。気持ち良い。
うっすらと瞳を開けると、黒髪がきれいな、真っ白な女の子。…誰だろう。
「あり、が、と…」
掠れた声で言えば、彼女はふんわりと笑った。可愛いなぁ、と思った。同時に、意識が消えていく。
「また、冬に会おうね」
☆ ★
「ん…」
目を覚ますと、女の子はもういなかった。当たり前だ。夢だったんだろう。
けれど、枕元には、そこに人がいたかのような形で、小さなみずたまりができていた。
「また冬に、か」
最後に聞こえた言葉を呟いてみる。
あの子は、もしかしたら…。
どちらにしても、俺の夏は、夏らしくないことばかり起きやがる。
『ま』なつのゆき by結城柵
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