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複雑・ファジー小説
- Re: 言霊〜短編集〜(コメント募集!) ( No.30 )
- 日時: 2012/02/26 10:54
- 名前: 霖音 (ID: 7D2iT0.1)
「そう、なんだ……」
「あれ、やっと理解した?」
非現実的だけど、こうなった以上認めるしかないと思った。
おどけたような自分に聞いた。
「ここって、色無かったの?」
私がここに来るまでに見た不思議な光景。
ここも、私が来たから色付いたのかもしれない。
「うん」
自分は、一言そう答えた。
少し寂しそうに答える自分を見ると、なんかモヤモヤした気分になった。
「色がないってつまんない?」
「うん」
ただ、うんとだけ答える自分。私がこの世界に来るまで、ずっと一人だったのかな。
何も分かんないから、私はこう言った。
「また来るからさ」
そう言うと、自分は、ぱあっと明るくなった。
「本当に?」
「うん。いつになるか分かんないけどね」
私は、ずっと広がる緑の草原でねっころがって言った。
「ありがとう!」
自分に言われるありがとう。なんだか嬉しくなった。
すると、ざらざらと音を立てて、自分から色が消えていく。
「時間切れだね、あなたも早く帰った方がいいよ。
色がなくなると出られなくなっちゃうから」
色が消えていくこの世界を見て、泣きそうになった。
「さようなら」
私がそう言うと、意識は途切れた。
私は、ふっと我に帰る。
新品のワンピースを濡らさないように歩く。
じめじめした雨は止んでいた。
私はきらきら輝く水溜まりに向かって呟いた。
「また行くからね」
爽やかな夏の色と匂いを、届けに。
終
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