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複雑・ファジー小説
- Re: 言霊〜短編集〜( ( No.31 )
- 日時: 2012/02/26 16:37
- 名前: 結城柵 ◆ewkY4YXY66 (ID: khvYzXY.)
『花火』
どーん、ぱらぱら。
夏の夜空に、色とりどりの花が咲いては散る。一瞬で咲き、また一瞬のうちに散っていく。その儚さがきっと、私たち日本人の心をくすぐるんだろう。花火をみつめる僕は、ぼんやりとそんなことを考える。
ごろりと寝転がった草の上。普段なら、背中がちくちくするけど、今は気にならない。
辺りはシン、と静まり返っている。響いているのは、花火の音と、どこか遠くの喧騒の音だけ。ここは、本当に人通りが少ない。二日間ほどここにいるけど、人が通ったところを見たことがない。比較的ひんやりとしているせいか、僕もまだ、花火を見つめることができている。
どーん、ぱらぱら。
あの日も、花火大会があったなぁ。あの日のは、こころじゃ一番大きな大会だったのに。楽しみだったのに、もう行けない。
あーあ。せっかくアイツと行く約束してたのに、さ。
どこかで足音がした。
多分、ヤツの足音だろう。様子でも見に来たのかな。
見開いたままの僕の瞳に、ヤツと花火が映っている。
乙一『夏と花火と私の死体』に影響を受けて。 by結城柵
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