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複雑・ファジー小説
- Re: 言霊〜短編集〜(『夏』完成!コメント募集!) ( No.43 )
- 日時: 2012/03/03 11:39
- 名前: 霖音 (ID: 7D2iT0.1)
『泥まみれスカート』
「なっちゃーん!とれたー?!」
秋の青い空が、霞んだ雲を飾りつけ。
草っぱらのニオイが私達を包んだ。
残暑の厳しさもおちついた、十五夜のまえの昼過ぎ。
「こっちやっぱ駄目やわ!」
ススキがばさばさ生えている土手で、私達は探し物をしていた。
お月見のうさぎのお供えもん。ばっちゃんがいってた。
「きーろくて、あまーいにおいがするんやて」
体は泥まみれ、顔も土色。だけど額に汗かいて。
「んなもん、どこ探してもないって!」
「きっと珍しいんよ!ばっちゃんが言ってたからきっとあるって!」
一年中かわんない田舎町。ぼろい自転車は背景みたいに馴染む。
背景みたいな自転車は、土手の上にカギ差しっぱなし。
夕焼けのおれんじを嫌がるように、むらさきっぽく光ってる。
乗りやすくなればなるほど、大きくなったなぁって思う。
寂しいなぁって思う。
「なっちゃーん?おーい!」
友達の声にはっとした。ぼーっとしてたら暗くなってた。
息を切らして走ってくる友達。近づくたびに香る飴のにおい。
自然と顔が綻んだ。
「……、すごーい!」
友達は、私よりばっちくなったけど、
両手にたくさんの花を抱えてきた。
「川のほうにたっくさんあった!」
にこにこ笑う友達に釣られて、私もにこにこした。
門限なんかそっちのけ。一番星に見守られて更けていく夜。
沈む夕日と、私の泥まみれなスカート。
ぼろい自転車が、それらをいっぱいに積んでいた。
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