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複雑・ファジー小説
- Re: 言霊〜短編集〜(『夏』完成!コメント募集!) ( No.50 )
- 日時: 2012/03/05 17:34
- 名前: 霖音 (ID: 7D2iT0.1)
『秋風』
夏祭りの思い出がうかぶ。
暑くて暑くて死にそうだったのを覚えていた。
金魚の墓が私を見つめている。
掬いたかったから掬っただけで、飼う気なんかない。
ぼうっとそんな事を考えていたら、いつの間にか死んでた。
私が殺したんじゃないもん。
夏祭りの記憶が掠れていく。
母がぶつぶつと小言を言いながら金魚の墓を作っていたのを覚えていた。
不愉快だ。不愉快だ。秋も金魚も赤いランドセルも。
開けっぱのドアから秋風が冷たい。
あれ。蜻蛉が飛んでいる。
「助けて」
金魚が泣いている。泣いている。
蜻蛉は意地悪く笑う。
「おまえはいなくていいんだ」と。
誰が何を言ってるの?
秋風は、私を咎めるように、冷たく吹いていた。
「死んでしまえ」
おしまい
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