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複雑・ファジー小説
- Re: 言霊〜短編集〜( ( No.51 )
- 日時: 2012/03/05 18:31
- 名前: 結城柵 ◆ewkY4YXY66 (ID: khvYzXY.)
【紅葉】
静かに本を読む、真面目な印象の少女。その隣では、少女とは真逆な、いかにも不真面目そうな印象の少年が、難しげな表情で本を睨んでいる。
少年は、ページをめくる合間合間に、ちらりと少女を見る。少女は、特になにもせずに、無表情で本を読み進めている。
「あー…。もう限界だ!疲れた!ハルちゃん、出かけようよ!ケーキバイキングの割引券があるんだ!」
少年は、投げ出すように本を机の上に置くと、懐から二枚の紙切れを取り出し、駄々をこねる子供のように叫ぶ。
少女は、横目に少年をみると、小さくため息を吐いて、本を閉じた。
「まったくもう…。アキくんは、読書よりも、食欲の秋ですか」
呆れたような少女の口調に、少年はシュン、と肩を落とした。彼に耳としっぽがあったなら、今は力なくだらりと垂れているはずだ。
「本当に、可愛らしい人ですね」
ふわり。花が咲いたように笑う少女。少年の頬は、赤く染まる。
もう秋も、深まってきていた。
『こ』うよう by結城柵
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