複雑・ファジー小説
- 姫は勇者で魔法使い。 ( No.38 )
- 日時: 2012/05/19 21:23
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: F4bOQQzb)
- 参照: サフィール「(m´・ω・`)m」な回。
「いくら母上といえど、妾の親しい者を愚弄することは許せぬ! この仕事、妾は降りさせてもらう!」
そのまま勢いで、などと言える勇気があればよかったのだが、生憎妾はそんな大層なものは持ち合わせていない。
「う、うむ……。 大人しく行こう……」
と、ソファの上で萎縮してそう言ってしまった。
こういう時、「ミコガミのようにはっきりとものを言えたら……」と切実に思う。
「そう、ならいいのよ〜」
母上がにっこりと微笑みを浮かべ、そう答えた。
—*—*—*—*—*—
「そこで考えたのじゃが、兄上を一緒に連れていけばよいではないか!」
自室に戻り、オルドルと訓練から戻ってきたミコガミに一通り事情を説明した後、妾が考えついた案を発表する。
自分で言うのもなんだが、なかなかの名案だと思う。
「姫様はバカなのですか?」
「いや、バカだろ」
「姫様がバカじゃなかったら、世界中の他の奴もバカじゃないぜ」
三人が鼻で笑いつつ、妾をバカにする。
いつも大体こんな調子だが、真剣に考えた案を鼻で笑われるのは良い気分ではない。
「ダメなのか……?」
兄上について一番詳しいであろう彼の弟であるオルドルに尋ねてみる。
小さい頃からクロヌを見ていたせいで感覚が麻痺しているが、改めて見ると、オルドルもなかなかデカい。
そのため、上を向かないと視線が合わない。
「無理ですね。 兄はほとんど寝たきりですし……」
オルドルが俯き気味にそう答える。
俯いている原因の六割は妾とオルドルの身長差のせいなのだが。
「……サフィール」
「な、なんじゃ!?」
突然、クロヌに腕を掴まれた。
しかも、片腕ではなく両腕ともだ。
これはいわゆる羽交い締めという状態か……?
「オルドルの兄に会いに行こうだなんて考えるな。 会ったことがあるから分かるが、事情を説明したら、あの人は気を遣って同行してくれるだろうからな」
「むっ! なんで妾はあったこと無いのに、汝は会ったことがあるのじゃ!?」
ミコガミの家族には会ったことがあるし、無論、クロヌの家族とも面識があるのだが、オルドルの家族とだけは会ったことが無い。
写真を見たことは有るのだが、写真では人柄や能力までは図れない。
「そうだぜ! もし無理に連れて行って悪化したりしたらどうするんだ?」
ミコガミが珍しくまともな言葉を口にする。
「うぬぅ……。 そこまで言うのなら何か他の案を練ろうかのぅ……」
やむ終えないので、ひとまず折れる。
とりあえず————
「クロヌ、そろそろ降ろしてはくれぬか……?」