複雑・ファジー小説

姫は勇者で魔法使い。 ( No.47 )
日時: 2012/06/24 15:39
名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: L3t15YTe)

「ありがとう! いつもは君の妹が届けてくれてたから、会うのは久しぶりやね。 これからもオルドルと仲良くしてやってね」

ヒジリくんから大量の梅干しがつまった瓶を受け取る。
僕はしょっぱいもの——特に梅干しが大好きなのだが、普通に食べようとすると「身体に悪いから」と言って、オルドルに没収されるから、こうしてミコガミ家から秘密裏にもらっているのだ。
前にヒジリくんの妹であるモモちゃんとキョウコちゃんにこっそり家を見せてもらった時に、彼らのお母さんとおばあちゃんが楽しそうに漬け物をつけている姿を見せてもらったりもしたのだが、その時にモモちゃんが、「需要と供給がずれてるから、もらって帰ってくれると嬉しい」と言われたから、それ以来ちょくちょく色々なものをもらっている。

漬けている本人達も作りすぎているコトを分かっているようで、オルドルにバレないように遊びに行くと、必ずキュウリとかナスとか大根とかバラエティー豊かな漬け物を分けてくれる。
「挑戦してみたから味見してみて」と言って渡された、キムチという辛い漬け物も美味しかった。
アレもまた食べたいなぁ。

「いや、むしろいつもモモ達と遊んでくれてることに感謝してるぜ。 あと、ウチの強制お土産は嫌だったら断ってもいいんだぜ? 甘納豆とか日本人以外にはあんまり美味しくないんじゃないか?」

ヒジリくんは僕が甘納豆を普通に食べてることを不思議そうに思っているらしい。
少し癖があるから、嫌いな人は嫌いかもしれないが、普通に美味しいものだと思う。

そうだ、日本といえば——

「ヒジリくん、姫様と知り合いなんだよね?」

甘納豆や漬け物累々の話は一旦おいておき、さっきのメモの話に戻す。
どう考えたって漬け物より姫様からのメッセージの方が大事だ。
漬け物も美味しいけどね。

「姫とは友達なんだぜ」

ミコガミが胸を張って誇らしげにそう言った。
さっき始めて本物を見た——いや、姿を見たばかりだから的確かどうか分からないけれど、姫様とヒジリくんは動作が少し似ている。
なんというか……子供が背伸びした感じが。

「あの……今から書く手紙を渡すのを頼んでもいい?」

—*—*—*—*—*—

「姫様、なんで兄に接触しようとしたんですか?」
「いや、汝の兄上も連れて行けば、万事解決かなぁ、と思って」

オルドルからサフィールが見つかった、という知らせがあったから戻ってきてみたら、案の定、サフィールが説教をくらっていた。
予想していた通りすぎて、逆にどうしたらいいか分からない。

とりあえず、ちょっと遠くの椅子に座って、サフィールが説教されている姿を見守ることに決めた。
助け舟を出したら、サフィールは反省しないだろうしな。