複雑・ファジー小説
- 姫は勇者で魔法使い。 ( No.48 )
- 日時: 2012/06/28 22:05
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: L3t15YTe)
- 参照: リヤン「あくまで一緒の布団にはいるだけだけどな!!」な回。
「姫ー、リヤンからだぜ」
夜、寝ようと思い、ベッドに入ろうとしたトコロ、天井から吊り下がっているミコガミが一通の手紙をこちらに寄越してきた。
ミコガミは当たり前のように妾の寝室に入ってきた挙げ句、最初からここにいました、と言わんばかりの表情で天井からぶら下がった状態になっている。
ビックリするくらいに常識的なところが窺えない。
「う、うむ。 確かに手紙は受け取ったのじゃ」
「まぁ、すぐに没収しますけどね」
ミコガミから手紙を受け取った次の瞬間、横からオルドルがそれを掠めとった。
「律儀な兄が手紙類を返さない訳がありませんからね。 やはり、見張っていて正解でした。 ミコガミは今晩、私と一緒に寝ましょうか」
「ッ!?」
「はいはい、可愛がってあげますからねー」
必死に抵抗しているミコガミを引きずりながら歩き去っていくオルドルを黙って見送り、しばらく経ってから布団から出る。
妾がそんな簡単に引き下がるわけがないのだ。
「姫様も私と寝たいのですか?」
扉を開けると、満面の笑みをたたえたオルドルが待ちかまえていた。
ダメだ、妾の行動は読まれている……!
—*—*—*—*—*—
「おかえり、オルド……なんでヒジリくんを連れてきちゃったん?」
日にちが変わったばかりの時間になってようやくオルドルが帰ってきた。
いつもよりも1時間以上も早く帰ってきてきてくれたのは嬉しいのだが、何故かヒジリくんと手を繋いで来た。
仲が良いようで嬉しいのだが、こんな遅くまで連れまわした挙げ句、泊めるというのは如何なものだろうか。
「今日はミコガミと一緒に一夜を過ごすんです」
オルドルがこれ以上ないくらいに輝かんばかりの笑みを浮かべて、爆弾発言をかました。
良くない、これは倫理的に良くない……!!
「ダメ! ヒジリくんをお家に帰してきなさい!」
オルドルのことは割と甘やかしてきてしまったつもりだが、ここぞという時には叱らないといけないと思う。
今回のこれは、ヒジリくんにも迷惑がかかってるし、尚更叱ってあげなくちゃいけない。
「リヤンもそう言ってるし、オレは帰……」
「そうはさせませんよ」
踵を返そうとしたヒジリくんの腕をオルドルが掴み、引き戻す。
「危なっ……!」
引き戻された際にバランスを崩したヒジリくんをオルドルが受け止める。
まぁ、オルドルが彼の腕を引かなければ、そもそも転ぶことは無かったわけだし、功績とは言い難いが、とにかくヒジリくんが無傷で良かった。
「兄さんが一緒に寝てくれるなら、ミコガミを帰してあげても……」
腕の中にあからさまに嫌そうな表情で暴れているヒジリくんを抱えているオルドルが何故か顔を赤らめてそう言った。
きっと、ヒジリくんが見ているこっちが想像しているよりも激しく抵抗しているから、押さえつけるために結構強い力を有しているのだろう。
「お風呂出るまで待ってるよ」
「ミコガミ、今日は特別に見逃してあげます」
そう言って、オルドルがヒジリくんを解放する。
あの言葉だけでも、オルドルは僕が言いたいことを分かってくれたようだ。