複雑・ファジー小説
- Re: 学園の百不思議!「Up to when?」〜12話更新〜 ( No.71 )
- 日時: 2012/10/04 21:55
- 名前: 亞扇 (ID: jHyiIImd)
第十三話「13…おいみんな!ジェイソンさんが来るぞ!身を守れ!」
「着いたよ…って起きてる?」
「………………………ん、ほへ?」
神威さんの冷たい手が額に触れ、私は目を覚ました。
ゆっくりと起き上がり、周囲を見渡す。…何だか妙に黒を基調とした裁判所のような光景が広がっていた。
いや、入ったこと無いから知らないけど。…イメージ?
「こ、ここは?」
「地獄の…閻魔の裁きを受ける場所。」
何となく見知らぬところで怖いので神威さんに密着してるとクスクス笑われた。
ちょっと恥ずかしくなったので離すと、神威さんは私から数歩離れ、空間に隙間のような穴をあけた。
「おひゃあっ!?こここここ、これも神威さんの能力なんですか!!?」
「んー、まァそうだね。」
曖昧に返事をし、クスクス笑う神威さんは今度は自ら私の手を握り、空間の中へと入っていった。
…あちこちにぎょろりと充血した眼玉があり、私を見つめている空間。…中には手が伸びてきたものもあった。
「これが…地獄、ですか?」
「クスクス違うぜ。ここは俺の空間の中…境界の、中。」
「境界?」
「機会があったら説明してあげるよ。」
紅茶でも飲みながらゆっくり、ね。と神威さんは言い、私も頷いた。
そして一緒に境界(?)の中を歩いたり飛んだりしているうちに神威さんが止まり、また別の穴をあけて外に出た。
「ここだよ。」
神威さんに優しく引っ張られ、私は降りる。
……真っ暗な空間だった。寒さも暑さも感じない。…聞こえるのは誰かの声。
「暗すぎて…目がおかしくなりそうです。」
「…………。そうだな。」
「みんなは此処にいるんですね?」
「うん。着いてきて。」
「あっ、ちょっとまってくださ…ひゃっ!」
慣れない道(道?)のせいか、私は綺麗にずっこける。
半ば呆れた目で見ていた神威さんが、手を引っ張って起こしてくれた。
「さて、お仲間に会うんだろ?」
「…はい。」
「声が聞こえた筈だ。………あれか?」
そこには真っ暗なはずの空間に浮き出るように黒い影がちらほらと見えた。
「!皆ぁ!!」
後で神威さんのため息交じりのクスクス笑いが聞こえたがお構いなしにそちらへ走る。
「…竹!?何しに来たの一体。」
ギロッと思いっきり睨まれ、私は数歩後ずさる。
そこには神威さんが居て、私たちの様子を笑いながら見ていた。
「あんた!何で…何で閻魔が此処に!」
「大丈夫だよ!みん」
「五月蠅い!近寄ると殺すわよ!」
「どうするの竹子さん?このままじゃ終わっちゃうぜ?」
自分が嫌われているのに微動もせず、神威さんは横目で私を見た。
どうするって言われても…
「どうしようもしません。」
「…君は彼女たちをどうしたいんだ?」
「助けたいですよ!!…無理でしょうけど。」
「竹、この人と知り合いなの?」
先程から怒鳴っていた仲間とは違う仲間が私に話しかける。
どんな内容であれ、話しかけてくれたことが嬉しくて私は答えた。
「うん!私が学園序列に入ってから色々と教えてもらってるの!」
「嘘ではないぜ。」
予め釘を刺すかのように神威さんが付け加える。
すると先ほどから怒鳴っていたリーダー格の仲間が急に怒りを爆発させた。
「竹…アンタ、いきなり抜け出したかと思ったらこんな奴と知り合って!…コイツは人の心を持たない化け物よ!?」
「そんなことない!何でそんな酷いこと言うの!?」
「もう人じゃないけどね。」
神威さんの冷静な声がかけられる。何でこう罵られて無表情でいられるんですか!と言おうと思い、上を向いた。
…確かにいつもと同じ表情だったけど明らかに目には悲しみの色が混じっていた。
「か、神威さんはいい人です!これだけは譲りません!」
「もうそれでいいわ!アンタは一族を裏切ったんだからそのまま行きなさい!」
「だからっ皆話を聞いてよ!」
「竹に冥土の土産で忠告するわ!もうその男と関わるのを止めなさい。あそこには沢山の知り合いができたはずよ!」
「みんなはどうしてそんな………にっ!?」
私は気が付くと先程の裁判所の前に立っていた。
「か、神威さん。どうしたんですか!?みんなは?」
「お前は少しそこに居ろ。」
「え?…まさか、殺すつもりじゃ!?」
「殺さないぜ。…さて、話を付けてこなくちゃな。クスクスクス…」
特に詳しい理由も話すことなく、また境界に入ろうとした。
「神威さん…皆がすいません。……私は神威さんがいい人だって知ってますから!」
「…………ぇ?」
「私の友達に悪い人は…いませんよ?」
「……友達…か。クスクスクスクス!俺が友達?友人は選べ、と言われなかったのか?」
「選んだ結果がこれですから。」
「そうか。」
「はい!」
「……………………………ありがと…。」
ボソッと小さい声で神威さんが何か言った気がして、私は聞き返そうとしたがその時は既に消えていた。
「アンタか…竹は何処だ?」
「こちらが安全な場所に置いておいたぜ。クスクスクス……!」
神威は空中に作った空間から竹子の仲間の元へ優雅に降りる。
神威なりに慈悲をかけて優しく語りかける。…しかし、明らかな馬鹿にした態度も交えながら。
「っ、今すぐ竹をここから出して頂戴!」
仲間のリーダー格が神威に詰め寄り、大声で怒鳴る。
「へぇ…竹子さんを追い出したのはお前らだろう?」
「竹がここに来るのは早すぎる」
「……竹子さんの事大切なのか?」
「えぇ、そりゃもう目に入れても痛くないほどに…私達もそんな事したくも無かった。けど決まりは決まり…仕方なく追放しました。そう決めた時は気絶したり寝込んだりで大変でした」
「そう……」
「…貴方は、竹を…………いえ、何でもないです。」
「?」
相手の言葉を待っていた神威が何を言おうとしていたのか、と問おうとする。
しかしどうせ話してくれないだろうと思い、呆れ交じりに目を閉じた。
「今頃暇そうにしてるかもね。…さて、おいで。」
「なぜ?私達は地獄に落ちたのでしょう?竹にあわせると?」
「ここからはお前らの問題だろ。クスクス…!」
神威が竹子とは違い、少し強引に手を引っ張り、境界の中へと飛び込んだ。
「んー…………………んむ?」
「う、わ、わ、わ、わっ!!!」
「ただいま。」
いきなり目の前に神威さんと皆が現れ、少し眠気を感じていたが一気に覚醒する。
神威さんは皆に何か促すように笑いかける。…すこし悩んだように顎に手を当てていた仲間が口を開けた。
「……なぁ竹」
「うひゃぉいっ!?な、なんでしょぉ〜〜?」
「あのさぁ、なんで掟やぶっちゃったワケ??」
「うぅ、なぜか言っちゃいました。スミマセン…」
「…殺すのは名残惜しいので、こうしましょう」
皆は私と神威さんを交互に眺めて、頷いた。
「ん?俺も?」
「もう一人、座敷藁子を送る事にします。監視役で。」
「か、監視役?誰のですか?」
「モチロン貴女のです。」
それでいいですか?とでも言いたそうに仲間が神威さんを見つめた。
神威さんはすぐに優雅に笑い、言った。
「分かった。じゃあ君たちを俺の知り合いの所有地に預けるとしよう。そこは天国さ。明日には早急にその子を送ってもらうよ。序列が一つだけ空いているからそこに入れるよ。それでいい?」
つらつらと神威さんが言うものだから少しみんなで唖然としていたのだが、仲間の一人が
「ええ、それでいいです。ありがとう。」
「それじゃあ今日はお開き。解散!」
神威さんがパチリと指を鳴らすと境界が現れ、私はそこに吸い込まれてしまった。