複雑・ファジー小説
- Re: 学園の百不思議!「Up to when?」〜13話更新〜 ( No.73 )
- 日時: 2012/10/05 23:03
- 名前: 亞扇 (ID: jHyiIImd)
第十四話「動き出す異変」
「あ、神威さん。帰って来れたんですね!」
「そうだね。…大丈夫?あんなところ行って君の精神は生きてる?」
「精神?ですか?……特に異常は無いと思いますよ。」
「そう。ならいいぜ。」
神威さんと私は先程の会議室の中にいた。
そして、地獄の境界を閉じ、会議室のドアを開けて何処かへ行ってしまう。
「ど、何処行くんですか神威さん!」
「校長室にちょっと取りに行くものがあるんだ。来る?」
「はい!是非、ご一緒させてください!」
「これだよ。」
神威さんが校長室の机の引き出しから巻物を取り出した。
…でも、これって…
「神威さん。これ、巻物ですか?何か全然雰囲気が違うし…むしろ透明ですよね、コレ。」
「クスクス!これは閻魔帳。時々エア巻物とか言われてるけどね。」
「綺麗ですね。全然何書いてあるか分からないですけど…」
「傍から見れば七色の何かがはめ込まれた巻物だよね。ちゃんと文字が書いてあるぜ。」
神威さんはいそいそと何かを書きはじめる。…そういえば。
「あの、神威さんって故郷とかあるんですか?丁度仲間のこと考えてたら思いついちゃって…」
「故郷?………………俺の故郷は此処だぜ?いや、地獄かもな。」
クスクスクスと見下すかのように笑う神威さん。
時々、思う。
どうしてそんなに悲しそうに笑うの…?
私は無意識に座っている神威さんに近付き、さらさらとした神威さんの藍色の髪を撫でた。
その瞬間
「……………………………………ぁっ!」
引き攣ったような声を上げ、凄い勢いで私の手を払い除け吸い込まれるかの勢いで後ろの壁に下がる。
そのまま数分間何かに怯えたような、でも虚ろな目で私を見つめていた。
「か、神威さんスイマセン!何か嫌な事でもしてしまいましたか…!?」
「っうぅ……………あ。」
ハッとしたように虚ろだった目に光が戻り、一度瞬きをして私を見た。
「…クス、悪いね。驚いた?」
「え、あ、まぁ。」
「じゃあ用事もあるから俺は行くよ。…じゃぁね。おやすみ。」
逃げるようにその場から去っていく神威さん。声もかける暇無く出て行ってしまった。
その様子を旧校舎の屋上からのんびりと黒藤は眺めていた。
「これで一件落着ではない、竹子。真なる敵は-------------------」
「一足遅かったようだね、黒藤。」
くるりと声のした方に振り返ると、優雅に黒藤を見る神威が立っていた。
「どうやらもうすぐのようだな、神子。…………いや、今は彼岸 神威と言ったか。」
無表情のまま神威は視線を逸らし、黒藤に背を向けた。
「かつては人の子として生まれ…幼くして命を絶ったお前が。再びこの異変に刃向うというのか?」
「フラグは立ってしまった…なら俺もこの座を守り抜くだけ。」
「そうか。……ではワシが次に見る頃にはどちらかの羽が散っていることだろう。」
「お前は-------参加する気は無いのか?」
「ワシは関係ないからな。」
「素直でよろしい。」
神威はクスクスと笑い、その場を去ろうと一歩踏み出す。
黒藤も神威に背を向けたまま、声をかけた。
「待て………………竹子には、妖怪の素質があるか?」
「無い。…彼女は仲間を守ろうとしていた。でも前は俺を殺そうと刃向ってきた。……そこは評価できる。でも変わらなかった。」
神威は一呼吸置き、再び言葉を紡ぎだした。
「彼女は、そんなときは…とても悲しい目をしていた。」
「そうか。彼女は生粋の妖怪なのだがな。…どうやら貴様の方が素質はありそうだ。」
「クスクスクスクスクス!!そりゃどうも。」
ニヤリと不敵に笑い、去っていく神威。
黒藤も軽く鼻で笑い、その場を後にした。