複雑・ファジー小説
- Re: 学園の百不思議!「Up to when?」〜15話更新〜 ( No.75 )
- 日時: 2012/10/07 12:29
- 名前: 亞扇 (ID: jHyiIImd)
第十六話「聖 左京」
「ふおぉぉぉぉぉ!誘ってくれてありがとうございます神威さん!!!」
「ここは天国。此処に住む人々は快楽に満ち、苦しみはない生活を送ってる。…地獄とは真逆の場所だね。」
「すっごく綺麗ですね!」
見渡す限り綺麗な景色が広がる。地獄に行ってすぐのせいか、いっそう綺麗に見えた。
建物は日本家屋のようだ。
「非想非非想天ってとこに用事があるんだ。全ての世界の中で最上の場所にあることから、有頂天と言う。」
「そこの薬屋っスか?俺、花映学園に来るまでそこで働いてたんスよ!」
「へぇ。じゃあアイツと知り合い?」
「まぁそうですね。」
アイツ?と私は聞こうと思ったが、松咲が神威に何かを言おうとしていたので先に言わせておく。
「ちょっと挨拶しておきたいんで先に行っていいっスか?」
「別にかまわないぜ。……竹子さんはどうする?」
「わ、私は………その、えっと。か、観光したいので此処に残ります!」
「分かった。じゃあ一緒に散歩でもするか。…先に行ってていいぜ。」
「ちぇ。」
少し未練があるように私のことを見てきたが、蹴り飛ばしたらさっさと行ってしまった。
「お久しぶりですー。松咲です!」
松咲が勢いよくドアを開ける。
松咲が働いていたのは、「蓬莱月」という薬屋だった。
「あ!松咲だ!久しぶり!」
「あの人は?」
「今、奥にいるよ。」
ちなみにこの男は、鬼灯 哉斗。前まで一緒に仲良く働いていた同業者だった。
「何だよ哉斗ー!お前、少し太ったんじゃねえの?」
「太ってないよ〜。」
二人でゲラゲラと笑っていると、奥からもう一人男が出てきた。
「哉斗君。この草切って煮て…………あれ、松咲くんだ。久しぶり。」
「お久しぶりです!」
柔和に微笑む男に松咲も笑いかける。そして、思いついたように男を見た。
「そういえばそろそろ俺の知り合いが来ると思います!俺、案内してきますね!」
「知り合い?…今日来るのは馬鹿だけだって聞いたけど………」
「行ってきま--------------------す!!」
話を聞かずに飛び出していく松咲を見て、哉斗はため息をついた。
「相変わらずですね。……そうだ。この草でしたね。」
哉斗は、受け取った草を見る。
「あれ?何ですかコレ?」
「何だと思う?」
「うーん…………………………あ、彼岸花?」
「そう!」
哉斗の手から草を取ると、説明を始めた。
「彼岸花。ユリ科。曼珠沙華とも呼ばれる。学名の種小名 radiata は「放射状」の意味。全草有毒で、特に鱗茎にアルカロイドを多く含む。
吐き気や下痢、ひどい場合には中枢神経の麻痺を起こして死にいたることもあるんだ。
別名の曼珠沙華は、"天上の花"という意味も持っていて、異名が多く、死人花、地獄花、幽霊花、等。日本では不吉だと嫌われている。
花言葉は「独立」「再会」「あきらめ」。「悲しい思い出」「想うはあなた一人」「また会う日を楽しみに」、だよ。」
「そして、花の形が燃え盛る炎のように見えることから、家に持って帰ると火事になると言われているんだぜ。」
「そうそう………ん?」
「お前は大量に家に持ち帰って大火事になって焼け死ぬがいい。」
何時の間にか到着していた神威たちに、哉斗たちは少し驚いた。
「哉斗くん。間違ってもコイツの言うことを聞いちゃだめだよ。信用したら死ぬからね?」
「それはこっちのセリフだぜ。コイツの脳味噌は信用してもいい。それ以外は信用するな。」
中に入るなり神威さんと男の人のメンチ切りが始まる。
ふと思いついたかのように、松咲が私に言った。
「紹介するぞ竹!この人は、聖 左京さん。天国で一番偉い人だ。神威さんの逆バージョンと思っていい!」
「どうぞよろしく。」
メンチ切りを中断した左京さんが、私に向き直りひらひらと手を振った。
「そういえば注文していた薬はできたのか?」
「うん。ちゃんと哉斗くんが作ってくれたよ。」
「お前が作ったんじゃないのか。」
左京さんが机の中からゴソゴソと何かを取り出した。…薬の袋?
「じゃあ…だいたい30万くらいでいいよ。よこせ。」
「金額詐欺するな。」
お互いにお互いのほっぺたをギリギリと引っ張りながら薬を受け取る神威さん。
……仲が、悪いのかな?
「性根の似た者同士は嫌い合うって言うだろ?」
「そういうこと。」
松咲と哉斗さんが、コクコクと頷く。
「薬貰ったんだからさっさと帰れ!邪魔だ!僕の仕事に支障が出る!」
「だ、そうだぜ。特に仕事もない癖にな。」
「いいから帰れ!」
と、半ば追い出された私たちは、本命の場所へと向かった。