複雑・ファジー小説

Re: 学園の百不思議!「Up to when?」〜15話更新〜 ( No.83 )
日時: 2012/11/24 15:56
名前: 亞扇 (ID: jHyiIImd)

第十七話「Everyday花粉症の私」


左京さんの店を出た後、(追い出された後?)行ったのは大きな桜の前。
学校とか森に生えている桜よりも大きくて…綺麗で……妙に紅い。

「綺麗だろ、竹!この桜は左京様の私有地でな!『聖ノ妖』って言うんだぜ!」
「ひじりのあやかしぃ?」
松咲が誇らしげに、そうだ!と頷いた。そして私の2、3歩前に行き、両手を広げて説明する。
「聖ノ妖は左京様一家…聖家が代々受け継いできた由緒ある桜でな!他にも左京様は色々と私有地を持ってるけど一番美しいのはこの桜だ!」
「でも…どうしてこんなに真っ赤なの?」
「死者の血を吸うからさ!聖ノ妖は妖怪桜なんだ!!」
「正しくは天国へ来た人たちの血を吸う吸血桜………だけどね。」
私たちのかなり前を行っていた神威さんが振り返り、笑顔でそう付け加えた。
そして桜の前まで行くと沢山の魂魄が浮いていた。
仲には普通に人が座っていたりする。
「いい花見の名所でね。飲みに来る人が多いんだよ。」
神威さんは私たちの隣に来て言った。そして辺りをキョロキョロと見渡し、何かを見つけたようにそこに焦点を合わせている。
私も倣って神威さんの方向を見る……………………あ!!!!

「皆!」
「え?竹と松!?どうしてここに…」
そこには前に地獄に堕とされた仲間のみんなが居た。…そういえば神威さんが前に言ってたっけ。
『じゃあ君たちを俺の知り合いの所有地に預けるとしよう。そこは天国さ。』って…。
「神威さん!約束、守ってくれたんですね!!」
「まぁね。」
神威さんはクスクスと笑い、仲間の元に歩み寄る。
もう皆は怯えたりもせず、神威さんを穏やかな目で見た。
「ありがとうございます。こんな素敵な場所に置いてくださって…。」
「クスクス。礼はいらないぜ。」
「そういえば竹。あんた、松とはどうなの?」
「ほへ?」
「監視。…松のことだから、どうせ竹にべったり張り付いてるでしょ?」
「人選を間違えたかしら?」
「いや、多分正解のはず………」
皆が松のことについて討論を始めている。それを見ていた松は涙目になっている。
…ちょっと可哀相かも。
「みんな、大丈夫だよ。松もしっかり役目を果たしてくれてるし!」
「た、竹………竹ぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええ!!!」
「前言撤回。やっぱ人選ミスですね。即刻別の人をお願いします。チェンジプリーズ!」
ずりずりと私に抱き着いてくる松咲をはたき落とし、みんなと何か会話をしようとした……




『非常警報!非常警報!獄卒一名が地獄の牢屋から逃亡、直ちに全獄門を封鎖してください。繰り返します。
地獄の牢屋より----------------』
近くに大きなサイレンが鳴り響く。と同時に神威さんの鋭い目が更に鋭くなった。
「え、何…?警報?」
「逃亡って…地獄で何が起こったの?」
辺りの人魂は一瞬にして消え、傍にいた人たちはそそくさと帰って行った。
「神威様ァァァァァァァ!!!」
一人の角の生えた男の人が神威さんの傍に来る。
鬼だろうか…かなり急いで来たようで息が上がっていた。
「大変です!見張りが油断をしていたようで怪我をさせられて…元獄卒の、罪鬼 棘が逃げ出しました!!」
「罪鬼 棘?」
「はい。何か気に喰わないことがあって反発し、囚われた者です!」
「ふぅん…八咫烏警察に連絡は?」
「まだです!」
神威さんは小さく微笑し、棒のはめ込んである右手を薙ぎ、言い放った。
「まず直ちに八咫烏警察に連絡を入れて。人質を取られないように戸締りをしっかりさせるように。相手の情報を入れるようにとも伝えること。複数人の可能性もあるからその辺も抑えておけよ。…このことを丸々放送に入れろ!俺は後から行く。」
「え、……は、はいぃ!!」
鬼の人は内容をメモしながら走って行った。
…相変わらず凄いなぁ。どうしてこんなことを直ぐに思いつけるんだろ?
神威さんは私たちの方に振り返ると、また早口に言った。
「俺たちも探そう。まずは人数も増やすことも大切だから気に喰わないあのアホの店に行って二人獲得してくるぞ。派遣された監視の君は、竹子さんの仲間たちの安全確保に回れ。俺と竹子さんは捜索に出る。」
松咲もポカンとしていたが、仲間たちを安全な場所へ誘導していった。
「彼ならそこそこ力もありそうだし。天国も知り尽くしている。安全な場所なら分かるはずさ。」
「そう…ですね。うん!」
「さてと。行こうか竹子さん。」
神威さんは少し嬉しそうに私に向かって微笑した。