複雑・ファジー小説

マルちゃん ( No.20 )
日時: 2012/03/25 17:54
名前: とろわ ◆DEbEYLffgo (ID: Cu5MNTxh)
参照: アリス=とろわ

しゃっ、と、カーテンを開ける音で僕は目覚めた。
目を開けた途端、日光が僕に襲いかかる。朝からとんだ嫌がらせだぜ。
「おはようございます、召喚主(マスター)。もう朝ですよ。それと、もうすぐ朝食の準備が整います。今日は【依頼】がありますから、早く着替えてきてくださいね」
そうして、鎧の上にエプロンという常識外れな格好をした狼耳の美青年が僕に……って、
「おはようマルちゃん。なんでその姿でいるんじゃボケ」
「いや、そう言われましても……。召喚主が昨晩私に起こせと頼んだのでしょう。それに、人間の姿じゃないと殺す、などと脅したのは貴女ではないですか。後、何故エプロンを着用しているのかといいますと……」「もう分かった。分かったから部屋から出ろ。僕はこれから着替えるんだから」
「——御意」
マルちゃんは実に不服そうな表情で部屋から出ていった。


「料理の手伝いをしたという事を伝えて褒めてもらいたかったのに……」

なんだかよく分からない独り言を呟きながら。







さて、ここで問題。マルちゃんは一体何者でしょーか。

————と、言ったところで誰も分からないだろうから簡単に説明しよう。
とはいっても、それを説明する前に僕の能力について説明しないとだから、先にその事についての話をしていこうと思う。


僕は世にも珍しい、魔物を操ることが出来る人間である。
何故なのかはよく分からない。マルちゃんと出会って初めて自分の能力を知ったぐらいだし。
……マルちゃんと出会った時の話は長くなってしまうので、それはまた後で話すとして。

今は人の姿をしているが、マルちゃんの本来の姿は狼——グリフォンの翼と大蛇の尾を持つ狼『マルコシアス』である。
当時の僕はなかなか本名を覚えられず、マルちゃんと呼んでいたら、自然とそれが定着したので、今も僕は親しみをこめてマルちゃんと呼んでいる。


僕の能力は、その場にいるモンスターを一時的に味方にする事ができ、基本はキャッチ&リリースである。
だから、結界内だとそんなことできないし無意味な能力なんだけど、マルちゃんは(まあ後もう一体いるんだけどね)何故かいつでも一緒にいることができるのだ。
まあ、一緒にいれるとはいっても、僕が望まないとでてこれないようにはなっているから、街でうろちょろすることはない。むしろそれだったら常に命狙われる事になるけども。……恐ろしい。

そういえば、マルちゃんに一回だけ、普通は役目を終えたら皆そそくさと何処かへ消えてしまうのに、どうして一緒にいてくれるのか、と大真面目に尋ねたことがある。
その時、マルちゃんは一瞬驚いたような表情をしたがその後にクスリと笑って
「そんなの、貴女の事が大好きだからに決まっているでしょう」
って言ってくれたんだよなあ。
魔物の癖に、というか悪魔の癖に、マルちゃんはかっこいいから困ったもんだぜ。……本人には一度も言ったことがないけど。


まあ、そんな訳で、僕とマルちゃんはとっても仲良しです。ちゃんちゃん。






「召喚主ー、お着替えは終わりましたかー?」
「ああ、ごめんごめん。もう少し待っててー」